色恋沙汰はどこまでも

 「で?」

 「で?……とは」

 「なんやったんすか」

 かくかくしかじか──。

 「へー。で?」

 「いや、これ以上話すことないけど」

 「あのセンコー、なんもしてこんかった?」

 「してくるわけないでしょ……ちゃんと生徒を守ろうとしくれる熱血教師だったわ」

 「ふーん」

 えーっと、なにその疑いの目は。

 「なによ、なにが言いたいわけ?なんか龍おかしくない?」

 「別に、いつもこんなんでしょ俺は」

 「うーん、まあ、なんでもいいけど。ごめん、ちょっと疲れたから少し寝てい?」

 「んじゃ飯の時間なったら起こします」

 「ごめんね?ありがとう」

 「うす」

 適当に着替えてベッドに寝転びながら昨日今日で起きた出来事が頭をグルグルして目が回りそう。日髙のことだけでもいっぱいっぱいなのに……。

 「はぁぁー」

 深いため息と共に眠りに就いた。

 ── ん?人の気配がする、たぶんこれ龍だ。なんで龍が私の部屋に?ていうか、なんでベッドに腰かけた?

 「凛子さん」

 私の腕を指でなぞってピタリと止まった。そこ、あの時怪我したところだ。

 「俺のもんだろ」

 チュッと控えめなリップ音が部屋に響いて、その音と触れられた感覚的で龍の唇があたったんだとわかった。頭ではそう理解できてるのに心が追いつかない。なんで?どうして?ばかりが心を蝕んでいく。

 龍が私の腕の傷に口づけをした意味はなに?『俺のもんだろ』ってなに?

 「……龍、なにしてんの」

 「ああ、やっぱ起きてましたか」

 「じゃなくて、なにしてんのか聞いてんの」

 「消毒」

 「は?ってちょ、痛っ!」

 結構な勢いでデコピンされて悶える私を鼻で笑いながら見下ろしてる龍を見て確信した。うん、さっきのに深い意味はなにもない、絶対にない!