色恋沙汰はどこまでも

 「ああ、羽柴さんなら一緒に閉じ込め食らってました。ね、羽柴さん」

 ポカンとしてる場合ではない。うん、たぶん衝動的なパターンのやつでしょ。年頃の男子だしきっと血迷ったんだろうなーと言い聞かせながら2人のもとへ向かう。

 「おい羽柴……お前なにも言わずいなくなんなよ、焦ったわ普通に。おっさんの寿命削ってくんな、高くつくぞ」

 私をチラ見した先生は一瞬、顔をしかめた。それが『なにしてんだお前ら』って言われてるような気がしてドキッとする。

 「うーし戻るぞ~。新藤も送ってってやろうか?」

 「助かります」

 車内は盛り上がるわけでも盛り下がるわけでもなく、基本的に先生と新藤君があれやこれやと喋って私は『えー』とか『そうなんだー』とか言うだけ。時々ルームミラー越しに先生と目が合ったり、新藤君はこっちに振り向いてくるから目が合ったり……いや、おかしい、なにかがおかしい。

 「ありがとうございました」

 「おう、またな」

 「羽柴さん、また月曜に」

 「うん、じゃあね」

 なんだろう、このムズムズする感じ。

 「ただいまーって、びっくりしたぁ。なによ龍」

 「おかえりなさい、凛子さん」

 「う、うん」

 玄関で仁王立ちしながら腕を組む大男こと龍に若干ビビりながら、スーッと横を通り過ぎようとした時、ドン!と壁に手をつく音と共に私の目の前には墨のガッツリ入ってる太くてご立派な腕が行く手を阻む。