色恋沙汰はどこまでも

 お互い上体を起こした時だった。

 「開けっ放しにすんなよなぁー」

 パチッ、ガシャン!ガチャ。そして遠ざかっていく足音。どうやらこの体育館倉庫は窓がないらしい。電気消されて真っ暗だし、多分鍵閉められたっぽい。ちなみに私はスマホ持ってきてない。とりあえず扉ぶっ壊すせるかなー?なんて普通の女子だったら出てこないであろうワードが私の脳内に飛び交いつつ動こうとした時だった。ガシッと二の腕を掴まれて、なんだろう……新藤君との距離がめちゃくちゃ近い気がする。

 「羽柴さん、暗いから動くと危ないよ。目が慣れるまで動かないほうがいい」

 「あ、うん。えーっと新藤君はスマホ持ってきてる?」

 「ごめん、カバンに置いてきた」

 「そっか、私も手元に無い。まあ、なんとかなるでしょ。堀江先生が多分探しに来ると思うから待ってよ?」

 「なんで堀江先生?」

 「あー、わけあって堀江先生と一緒にいたんだよね」

 すると、私を掴んでいた新藤君の手に少し力が入って、それにピクッと反応した私に気づいたのか『ごめん』って言いながら手を離した新藤君……になぜか優しく抱き寄せられて、ぎゅっと抱きしめられてるんだけど……?

 どうやらおかしい、なにもかもが。

 日髙も龍も先生も新藤君もどうしちゃったわけ?正直なんかこう、今までろくな恋愛経験してないから不意を突かれる出来事にめっぽう弱いらしい。本当にどうしていいのかわかんなくなるし、ぶっちゃけめっちゃテンパる。というかマジで恥ずかしくすぎて心臓はち切れるって。

 「あの、新藤君?」