「悪かったな」
「え、なにがですか?」
「嫌な思いさせたろ」
「いや、別に先生が謝ることじゃなくない?それより、なんか庇ってもらっちゃってどうもです」
「……ま、俺の大切な生徒だからな」
車に揺られ、風と共に煙草の匂いが香ってくる。先生の横顔はなにを考えてるのかいまいちわかんないけど、不機嫌でも上機嫌でもないしいっか。それから用があるだかなんだかで彪ヶ丘に寄ることになった私は車内で待機中。すぐそこに体育館があって、扉が少し開いてるのがなんとなく気になった私は車から降りて体育館の中を覗いてみた。
「誰もいないじゃん」
これまたなんとなく体育館の中に足を踏み入れて、なにを思ったのか体育館倉庫へ向かった私は『へえー、なんか色々置いてあるなー』とか思いながら広い倉庫の中を探検してた。
「バスケットボールって結構でかっ」
「え、羽柴さん?」
「え、あ、ちょっ!?」
「危ない!!」
声をかけられて振り向くとそこにいたのは新藤君で、我ながらどんくさいとしか言いようがないけど、振り向き様によろけて後ろに倒れそうになったのを新藤君が咄嗟に助けてくれた……のはいいけど、積み重ねられた体操マットに押し倒されてるみたいな感じになってめちゃくちゃ気まずい。たぶん助けてくれなくてもこのマットがあったから問題なかったと思う。まあ、助けようと思ってくれた新藤君の気持ちは嬉しいけど。
「あ、あの、これはわざとじゃなくて!」
「うん、わかってるよ。ありがとう、新藤君」
「ごめん、本当にごめんね」
「いや、私こそどんくさくてごめんね」



