色恋沙汰はどこまでも

 「はあ、そうでしょうか。気に障ったのなら謝ります、申し訳ございません」

 「そういうことじゃないでしょうがっ」

 「あーもう、いいって先生」

 「羽柴、こういう時は引き下がんな。下手に出る必要もねえ」

 「いや、引き下がってよ。もうめんどいし、ぶっちゃけどうでもいい。勝手に言ってろとしか思えないから。だいたい、そんなんで煽ってるつもりなのかなー。ガキの口喧嘩でもあるまいし」

 鼻で笑いながら相手方を見る私も大概性格ひん曲がってるわ。

 「両親があの両親なら子も子ですね」

 「あー、悪いですけどそういうの私には通用しないんで。親のこと悪く言えば~とかそういう魂胆ですよね?テンプレかよ、マジ笑う」

 「なるほど?救いようのない単細胞馬鹿というわけでは無さそうだ」

 「場数が違うんで。何事も場数踏むのが大切かと」

 何事も冷静に。特に喧嘩の時は冷静さを欠くなと教わったし羽柴家の家訓にもなってる。私は一度、美智瑠絡みの喧嘩で冷静さを欠き、美智瑠に怪我をさせてしまった。とはいえ軽い擦りむき傷で、焦った美智瑠が1人で転んで……っていう流れだったけど、焦らせたのは冷静さを欠いた私が原因なわけで、だから私のせい。もう二度と、冷静さを欠くことはしない。元々そういうタイプでもないし……そういうタイプじゃないはずなのに、あの男のせいで狂い始めてる──。

 「あのSSSは私が初めて開発した擬人化文房具の最高傑作。ですが、この私達でさえSSSの全ては把握しきれておらず、ごく一部しか把握できていないのが現実です。来る者を全否定し拒絶するSSSに頭を悩ましていました。あれは最高傑作にして最高峰……そして、いわば“バグ”なのです」