色恋沙汰はどこまでも

 「大丈夫か?」

 「まあ、はい」

 「悪かったな、想定外すぎた。あんな自我の塊みたいな奴、元来存在するはずがねぇんだが……ま、俺に責任がある。なんでもしてやっからなんでも言ってこい」

 「最終的に契約したのは私だし、別に先生のせいじゃなくない?気になくても大丈夫です。悪いのは全部SSS(日髙)なんで」

 「……まぁ、変わってねぇか。お前は── だわな」

 「え?なんて?」

 「いや?こっちの話。うーし、行くか」

 「あ、はい」

 車に乗ってそっこー煙草を咥えて火をつけた先生を呆れた目で見るしかない私。そんな視線に気づいたのかフッと鼻で笑って外に煙を吐き出してる。

 「別に喫煙所で吸えばよかったじゃないですか」

 「危ねぇだろ」

 「なにがですか?」

 「周り男だらけだっただろ。危ねぇじゃん、さすがに1人にすんのは」

 『いや、全然平気です。束になってかかって来ても全員もれなく伸せる自信しかありませんし』なーんて言えるはずもなく。私は“普通の女子高生”。

 「お気遣いどうもです」

 生徒と外出時に問題があったら教師としての立場が~みたいなのもあるよね。そりゃ気も遣うか。意外とって言ったらあれだけど、意外とちゃんとした先生なんだなー。

 「……やば」

 「随分とご立派な高層ビルで」

 擬人化文房具特別調査委員会の本部とやらは、見上げれば首が痛くなるほどの高層ビルで見上げるのをやめた。なんか場違い感ヤバくない?そもそも先生スーツなら私制服でもよかったんじゃ?とか思いつつ、案内されるがまま最上階までやってきた。案内されたのは会議室みたいなところで、『少々お待ちください』と出ていく案内人。取り残された私と先生は最上階の窓から下を見下ろして、なぜか同時に顔を見合わせた。

 「「高すぎ」」

 この一言に尽きる。