色恋沙汰はどこまでも

 手を振っても振り返すわけもない龍。そんな龍は私達が乗ってる車が見えなくなるまでジッと立ってた。帰った後のご機嫌取りがんばろー。にしても、すんごい高級車。たしか26歳って言ってたような……26歳の教師ってこんなの買えるくらいの給料貰ってんのかな。

 「俺が金持ちってわけじゃねーぞ」

 ということは、実家がパターンね。人は見た目に依らずとはまさにこれ。

 「へぇー」

 「利用できるもんはしとかねぇとな~」

 「ま、それもそうですね」

 「悪い、煙草いいか?」

 「あ、どーぞどーぞ」

 うちお父さんもお母さんも吸ってるし、龍も吸ってるから煙草に抵抗はない。なんかむしろ安心するっていうか、臭いんだけどちょっとホッとするみたいなね。

 「あれ彼氏か?」

 「はい?」

 「さっきの」

 「え、いや、違いますけど」

 「そうか……ってやべ。これセクハラか?いやぁ、おっさんの戯れ言だと思って許してちょー」

 窓を開けて、煙草の煙がちゃんと外に出ていくように一応配慮しながら吸ってる担任。ていうか、『担任担任』言ってるとポロッと本人に『担任』とか言っちゃいそうだな。『先生』もしくは『堀江先生』……まあ、先生でいっか。

 「おっさんって年齢でもなくないですか」

 「羽柴くらいの年齢からしたら26なんざおっさんだろー」

 「さあ?どうなんでしょう。別に私はおっさんとは思いませんけど」

 「じゃあ俺も許容範囲か?なんつって~」

 「はあ」