第9章 - 君を知りたい
放課後、紗奈は気分転換に校舎の裏の静かな場所で座っていた。目の前には大きな木があり、その葉が風に揺れていた。時折、誰かが通り過ぎる音が聞こえるが、しばらく誰も近づいてこない。
「お前、どうした?」突然、背後から声がかけられた。振り返ると、司が立っていた。冷徹な目で彼女を見つめ、その目にはいつもの鋭さがあった。
「何でもありません。」紗奈は少し焦りながら答えた。普段ならば冷徹に戦う自分を演じているが、この時ばかりは心が乱れているのを感じていた。
「最近、強さだけじゃないものを感じるようになったな。」司は無表情で言った。その言葉が紗奈の心に深く響いた。
「強さだけじゃないもの…?」紗奈は少し考え込む。「それはどういうことですか?」
「お前、少しだけだが、心が揺れているだろう?」司は冷徹に言った。その目には、何かを見透かすような視線が込められていた。
紗奈はその言葉に驚き、すぐに答えることができなかった。「私は…ただ、強くなることだけを考えているんです。」
司は黙って彼女を見つめ、少しだけ歩み寄った。「お前の心を試してやろうと思う。」その言葉に、紗奈は心の中で動揺した。
「心を試す…?」紗奈は首を傾げた。
「冷徹さだけでは乗り越えられない試練がある。」司は少しだけ微笑んだが、その目はやはり冷徹だった。「お前が本当に強くなりたいなら、それを乗り越える覚悟を見せてみろ。」
その言葉に、紗奈は心を決めた。冷徹さを極めるためには、どこかで自分の心に向き合わなければならない。司が言うように、試練に立ち向かうためには心を試される瞬間が来る。それを乗り越えなければ、真の強さには到達できないと感じた。


