第8章 - 心の揺れ
紗奈は、あれから数日間、司と一緒に過ごす時間が増えていく中で、少しずつ自分の気持ちに変化を感じ始めていた。彼の言葉に触れるたびに、冷徹さを貫くことが本当に自分に必要なのか、疑問に思うことが増えた。それでも、司を超えたいという気持ちが揺らぐことはなかった。
「司を超えるためには、冷徹でいなければならない。」紗奈は毎日のように自分に言い聞かせていたが、次第にその言葉が心に響かなくなってきていた。彼を超えるために冷徹であり続けることが本当に自分にとっての幸せなのか、心のどこかで疑問を感じ始めた。
その日の放課後、紗奈は校庭でトレーニングをしていた。目の前に司が現れた瞬間、自然と足が止まる。
「お前、最近少し変わったな。」司は冷徹な目で紗奈を見つめながら言った。その声にはいつものような厳しさがあり、彼女を試すような鋭さが感じられた。
「変わったと言われても、私は…」紗奈はその言葉を呑み込む。「変わったのは、あなたが与えた試練のせいです。」紗奈はしっかりと目を見つめ、冷徹な自分を演じることにした。
「そうか。」司は少しだけ目を細めて、無言で歩き始めた。「お前がどう変わろうと構わない。ただし、俺を超えようと思うなら、冷徹さを身につけるだけじゃなく、それを完璧に使いこなさないといけない。」
その言葉に、紗奈は答えることができなかった。冷徹さを身につけることが本当に自分の望みだろうか、まだその答えは見つかっていなかった。


