冷徹の先にー司と紗奈ー




第6章 - 揺れる心
試練を乗り越えた後、紗奈は一人で校庭に立っていた。勝利の余韻が残る中、心の中では司への気持ちが強くなっていくのを感じていた。冷徹さを極めれば極めるほど、彼との距離が近づいているような気がしてならない。
「私は、司を超えるために戦っているんだ。」紗奈は自分にそう言い聞かせながら、心の中で彼を見つめる。
その時、背後から声がかけられた。「お前、強くなったな。」
振り返ると、そこには司が立っていた。彼の冷徹な目は、少しだけ優しさを感じさせるように見える。いつものように冷たい表情をしているのに、紗奈はその目に温かさを見た。
「ありがとうございます。」紗奈は少し戸惑いながらも、司に向けてその言葉を口にした。
「お前、冷徹さを手に入れたな。」司は微かに笑いながら言った。「だが、これでお前がすべてを手に入れたわけじゃない。」
その言葉に、紗奈はふと考え込んだ。冷徹さを身につけることで、司との関係が本当に進展するのだろうか。その不安が、心の中に広がっていく。
「冷徹さだけじゃダメなのか?」紗奈は思わず尋ねた。
「冷徹さだけでは、強さを手に入れても寂しいだけだ。」司は少しだけ目を細めて言った。「強さを手に入れるだけじゃ、心の中で何かが欠けてしまうんだ。」
その言葉に、紗奈は黙って聞き入った。彼の言うことが、どこかで真実だと感じる自分がいた。そして、その瞬間、司との関係が少しずつ変わり始めていることを感じた。