第10章 - 揺れる心、交わる心
その試練は、紗奈にとって予想以上に厳しいものだった。司が与えた試練は、彼女にとって自分の心を試すようなものであり、冷徹に振る舞いながらも、その裏で感情を抑え込むことが求められた。
だが、試練が進むうちに紗奈は気づいた。冷徹に戦うことがすべてではなく、時に心を開くことが強さになることもあるということに。
その日、試練の終わりを迎えた紗奈は、深夜まで一人で考え続けていた。心の中で交錯する感情、冷徹さを求める自分と、司に対する思い。そのすべてが、今の自分を作り上げているような気がした。
「司…」紗奈はしばらく黙って呟いた。彼に対して何を感じているのか、未だにその答えは出せていないが、確実に彼を超えるために、強くなりたいという思いは一層強くなっていた。
その夜、司が一人で校舎を歩いているのを見かけた。何かを考え込むような表情で、遠くを見つめているその姿が、紗奈の胸に不安と期待を呼び起こした。
「司。」紗奈はその背中に向かって声をかけた。
司は振り返り、冷徹な目で彼女を見た。その目の奥に、何かしらの感情が交差しているように見える。
「お前、俺を超える覚悟はできているのか?」司は静かに問いかける。
紗奈はその目をしっかりと見つめ返し、答えた。「はい。あなたを超える覚悟はできています。」
その言葉を聞いた司は、しばらく黙っていたが、やがて静かに歩き出した。「なら、お前にはまだ試練を与えなければならない。」司は言った。その言葉には、少しの期待と共に、どこかしらの寂しさも感じられた。
「試練…?」紗奈はその言葉に少しだけ不安を感じたが、同時に前を向く決意も固まっていた。
「お前が本当に強くなるために、最後の試練を与える。」司はその言葉をしっかりと紗奈に伝えた。彼の目の奥には、少しの優しさと共に、冷徹な意志が宿っていることがわかった。
「私は、必ずあなたを超えてみせます。」紗奈はその言葉を胸に、強く決意を固めた。


