「なにがあったの⁉︎ どういうことなの⁉︎ 納得できるように説明しなさい!」


 怖い顔をした鍋島先生に怒鳴られて、私は首をすくめた。

 ここは校長室。昨日の学食の事件について呼び出された私は、さっきからずっとこうして質問攻めにあっている。

 うう。先生、今日は一段と興奮して瞳孔開きっぱなし……。


「まあまあ、鍋島先生。あれはガス漏れ事故だったんだからね」


 白髪頭の校長先生が、穏やかな声で鍋島先生をなだめてくれた。

 あの事件は『食堂のガス漏れで全員が中毒をおこして倒れ、記憶がない』ということになっている。

 もちろん宙太君の集団催眠のおかげだ。

 だいぶ苦しい言い訳だけど、倒れた本人たちがそう言ってるんだから、みんな納得するしかない。

 でもそれで納得しなかったのが鍋島先生だ。


「ですが校長先生! あんな大騒動で榊さんだけなんともないのは不自然でしょう!」


 私が職員室に『ガス漏れです!』って助けを求めに行った後、大変だったんだ。

 消防署や救急車が何台も来てサイレンが鳴り響き、連絡を受けた保護者たちが学校に駆けつけた。

 でもガス会社が検査した結果は、まったく異常なし。

 そりゃそうだ。だってガス漏れなんかなかったんだもん。

 で、ひとりだけピンピンしてた私のことを、鍋島先生が怪しんでいるわけだ。