相談室のきみと、秘密の時間

次に進路。これが一番すんなりと決まった。ある時担任に呼ばれて、東京にある私立大の指定校推薦を受けてみないかと聞かれた。私にとっては願ってもない機会だった。

学部はもちろん心理学部で、私は二つ返事で了承し、冬休みに入る前には合格通知を受け取った。高1のあの時のように心理学部でいい、ではなく今は心理学部が良かった。

「進学おめでとう」

進路が決まった時にはアメリカに居る父にも電話して報告もした。久しぶりに聞く声は何だか思ったよりもたどたどしかった。

慧悟さんが言ったように大人になるほどあらゆることに不器用になるんだという意味が少しだけ分かった気がした。

大学の近くにアパートを借りて一人で住むことを話すと、母から通帳を受け取るように言われた。私名義の通帳には確かに十分すぎるほどの額が入っていた。

こうして春には私はこの家を出て、新しい道を歩き出す。

だけど私は一人じゃない。
私は何をするにも慧悟さんとのつながりを探している。

慧悟さんには怒られるだろうか、それとも笑われるだろうか。
どちらでも良かったし、どちらの慧悟さんも見てみたかった。
ただ慧悟さんが今度こそ私に振り向いてくれるように願っていた。