「お待たせ、遅くなってごめんね」
しばらくすると村越さんの車が現れ、扉を開けて私を迎えてくれた。私は周囲を気を配り黙ったまま空いた扉に手をかけて乗り込んだ。
雪で濡れたコートは脱いで畳み膝の上へと置くと村越さんは車の暖房を強めに調節してくれた。同時に車が静かに動き出した。
「すみません」
「いいんだ、こちらこそ連れ回しちゃってごめんね。普通の日々を重ねることは大事だ。でも人生にはね、たまにこういう日が必要なんだって思い知らされる。これ以上ないくらい核心に触れてみる日が。傷ついて傷ついて分からされる日が。そうじゃないと、人間は腐っていく気がする」
「私は誰より普通を求めていたのに、普通になるのが嫌だったのかもしれません。でも今日からは少し変わっていけそうな気がしています」
それは村越さんが教えてくれた気持ちだから、これから先もずっと見失わずにいられる。
村越さんの車はいつものようにゆったりと道路を走り抜けていった。街灯の光は眩しいくらいだったけれど、後はもう暗闇に沈んでいた。その闇すら今の私をワクワクとさせた。
「ねえ、彩葉?」
「なんですか慧悟さん」
「名前……まぁもういいか、もう今日で仕事も終わり。本当にただの村越慧悟だ」
先程からバックミラー越しに後部座席に置かれた綺麗な花束が見えていたので、特別に驚くこともなかった。
「花束を貰ったんですね。学校には本当にもう帰ってこないんですか」
うん、とだけ頷くと慧悟さんはその花束を手渡した。
「これ君にあげるよ。僕よりも君に相応しい」
「ありがとうございます」
「ピンクのガーベラ。花言葉は知ってる?」
「知らないです」
「感謝だ。君のお陰で感謝の日々だった。だから、ありがとう」
「そんなお別れみたいなこと言わないでください……」
「だって本当にお別れだろ。まだ君に伝えたいことはいっぱいあるが。約束しただろう」
車で15分ほど走り、目的地に到着した。
そこは空港だった。
「どこに行くつもりですか?」
「東京。実家に帰る」
「お願い、どこにも行かないで。私はまだ慧悟さんに何も伝えられてないんです」
しばらくすると村越さんの車が現れ、扉を開けて私を迎えてくれた。私は周囲を気を配り黙ったまま空いた扉に手をかけて乗り込んだ。
雪で濡れたコートは脱いで畳み膝の上へと置くと村越さんは車の暖房を強めに調節してくれた。同時に車が静かに動き出した。
「すみません」
「いいんだ、こちらこそ連れ回しちゃってごめんね。普通の日々を重ねることは大事だ。でも人生にはね、たまにこういう日が必要なんだって思い知らされる。これ以上ないくらい核心に触れてみる日が。傷ついて傷ついて分からされる日が。そうじゃないと、人間は腐っていく気がする」
「私は誰より普通を求めていたのに、普通になるのが嫌だったのかもしれません。でも今日からは少し変わっていけそうな気がしています」
それは村越さんが教えてくれた気持ちだから、これから先もずっと見失わずにいられる。
村越さんの車はいつものようにゆったりと道路を走り抜けていった。街灯の光は眩しいくらいだったけれど、後はもう暗闇に沈んでいた。その闇すら今の私をワクワクとさせた。
「ねえ、彩葉?」
「なんですか慧悟さん」
「名前……まぁもういいか、もう今日で仕事も終わり。本当にただの村越慧悟だ」
先程からバックミラー越しに後部座席に置かれた綺麗な花束が見えていたので、特別に驚くこともなかった。
「花束を貰ったんですね。学校には本当にもう帰ってこないんですか」
うん、とだけ頷くと慧悟さんはその花束を手渡した。
「これ君にあげるよ。僕よりも君に相応しい」
「ありがとうございます」
「ピンクのガーベラ。花言葉は知ってる?」
「知らないです」
「感謝だ。君のお陰で感謝の日々だった。だから、ありがとう」
「そんなお別れみたいなこと言わないでください……」
「だって本当にお別れだろ。まだ君に伝えたいことはいっぱいあるが。約束しただろう」
車で15分ほど走り、目的地に到着した。
そこは空港だった。
「どこに行くつもりですか?」
「東京。実家に帰る」
「お願い、どこにも行かないで。私はまだ慧悟さんに何も伝えられてないんです」


