母は嬉しそうに語った。
「全てが順調だった。世界の全てが私たちと新しい家族を祝福しているように思えた。だから、お父さんはあなたを彩葉って名付けたのよ。
世界が輝き全ての色が僕達の手の中にあるような祝福が貴方にも続いていきますようにって。その後ゆずも産まれて、家の中はもっと賑やかになった」
すると、母の顔が暗くなる。
「どうしたの、大丈夫?」
「大丈夫。あれはゆずが小学生になった年だった。あの人は急に思い悩むような仕草を見せることが増えた。仕事には行くけれど食欲もないし、眠れてないし、私たちを見ないように一人でお酒を飲んでいることが増えた。
すぐに理由を聞いた。『このまま爺さんになって人生が終わっていくのは嫌だ。本当はアメリカで機械開発の仕事をしたかった。そのためのアイディアをまとめた研究論文が評価されて、アメリカの研究所から誘われているって』って。
でもそれよりも今は大事なことがあるじゃないって言ったけど、あの人の心には全然届かなかった」
「お父さん、それですぐ離婚したの?」
「暫くは妥協して受け入れようとしてくれてた。そういう努力をして、でも限界が来たのがあの時だった。土下座されたわ。彩葉ももう9歳でいい機会だから、一緒にアメリカへ来てくれないかって」
「ならなんでその時みんなでお父さんについていかなかったの?」
「納得できなかった。どうしても。自分のことを家族よりも何よりも最優先にすることに。例えアメリカに一緒に行ったとしても今度はまた違う理由で別のことを押し付けてくるんだという気がした」
「難しい……私達がいたから、アメリカへ行けなかったってこと?」
「ねぇ、彩葉。大人になるっていうことは失うことに慣れていくことなの。大切な人を守るために何かを失う痛みを受け入れるっていうことなの。私達はそういう風に生きていくべきなの。
だけど、離婚したのは私の勝手だったよね。ゆずはそういう話全部こっそり聞いてて、『母さんについていくよ』って言ってくれた。『でも姉ちゃんは知ったら自分を責めるから、言わないでおこう』って」
「全てが順調だった。世界の全てが私たちと新しい家族を祝福しているように思えた。だから、お父さんはあなたを彩葉って名付けたのよ。
世界が輝き全ての色が僕達の手の中にあるような祝福が貴方にも続いていきますようにって。その後ゆずも産まれて、家の中はもっと賑やかになった」
すると、母の顔が暗くなる。
「どうしたの、大丈夫?」
「大丈夫。あれはゆずが小学生になった年だった。あの人は急に思い悩むような仕草を見せることが増えた。仕事には行くけれど食欲もないし、眠れてないし、私たちを見ないように一人でお酒を飲んでいることが増えた。
すぐに理由を聞いた。『このまま爺さんになって人生が終わっていくのは嫌だ。本当はアメリカで機械開発の仕事をしたかった。そのためのアイディアをまとめた研究論文が評価されて、アメリカの研究所から誘われているって』って。
でもそれよりも今は大事なことがあるじゃないって言ったけど、あの人の心には全然届かなかった」
「お父さん、それですぐ離婚したの?」
「暫くは妥協して受け入れようとしてくれてた。そういう努力をして、でも限界が来たのがあの時だった。土下座されたわ。彩葉ももう9歳でいい機会だから、一緒にアメリカへ来てくれないかって」
「ならなんでその時みんなでお父さんについていかなかったの?」
「納得できなかった。どうしても。自分のことを家族よりも何よりも最優先にすることに。例えアメリカに一緒に行ったとしても今度はまた違う理由で別のことを押し付けてくるんだという気がした」
「難しい……私達がいたから、アメリカへ行けなかったってこと?」
「ねぇ、彩葉。大人になるっていうことは失うことに慣れていくことなの。大切な人を守るために何かを失う痛みを受け入れるっていうことなの。私達はそういう風に生きていくべきなの。
だけど、離婚したのは私の勝手だったよね。ゆずはそういう話全部こっそり聞いてて、『母さんについていくよ』って言ってくれた。『でも姉ちゃんは知ったら自分を責めるから、言わないでおこう』って」


