相談室のきみと、秘密の時間

村越さんは予め用意してくれていた紅茶と母が差し入れたたい焼きを白い皿にのせてテーブルに置くと向かい側に座った。

村越さんが居るだけで、不思議と緊張はなくなった。いつも通りの自分をありのままにさらけ出そうという気持ちになれた。

「この紅茶、美味しいわ」

「それは和紅茶なんですよ。日本で作られているからか、香りにトゲがなくて味も優しいんです」

「ええとても。村越さんの雰囲気に似てますね」

村越さんは照れたように頭を少しかきながら、本題に入った。

「彩葉さんの方から概ねお話は伺っているかと思いますが、少しだけお話させてください。

僕は彩葉さんと八月末から十数回この場所で話をしてきました。始めは進路について悩み相談ということでしたが、二人で話を進めていくうちに彼女はもっと心の奥の深い場所にしこりができたまま今日まで過ごしてきたんではないかということが分かりました。

そしてそれが彼女の悩みの本質で発端なんじゃないかなと思うようになりました。そのことについて今日はお話してもらいたいのですが、基本的に僕はこの場の司会者のようなもので、まずは主役のお二人で自由に話をしていただきたいと思います。

僕は話が大幅に逸れたり、何か困ったことが起きたりしなければ基本的にはお話を聞いているだけでいます。よろしいでしょうか」

「ええ大丈夫ですよ」

「彩葉さんはいいかな」

「大丈夫です。今日はお母さんに聞きたいことがあって、それは今更かもしれないけれどお父さんのことで。今お父さんはどこで何をしているんだろう? それでどうしてお父さんと離婚しなければならなかったんだろう」

うん、と応えたまま暫く母さんは鯛焼きを食べていた。
私も間が空いたので同じく食べた。
鯛焼きの中にはカスタードクリームが入っていた。
私があんこをあまり好きではないのを母さんは知っているからだ。皮はふっくらと甘くてクリームは気持ちがほっとあたたまる優しい味だった。