相談室のきみと、秘密の時間

授業が終わり直ぐに校門へ向かうと既に母はスーツ姿で背筋をピンと伸ばし立っていた。

「早かったね」

「きなこ庵のたい焼き買って来たんだけどね、あそこ並んでるって聞いたのに珍しく誰も並んでなくてね」

たい焼きを手土産にするとは和菓子と紅茶という謎の組み合わせをこよなく愛する母らしいチョイスだなぁと思いながら、私は村越さんの居る相談室へと母を案内した。

「はじめまして。ここでカウンセラーをしております、村越と言います。ですが、これまで彩葉さんにはカウンセラーと言うより、ほぼお茶飲み仲間として楽しくお話させてもらっていました。

なので、お母様も御足労頂いて恐縮ですが、僕のことは先生などとは呼ぶ必要ないですし、この場のことをあまり堅苦しく考えないで下さい。喫茶店でお話する感じでリラックスして頂ければと思っています」

「分かりました。村越さん、今日はよろしくお願いしますね。ささやかなものですが、こちら召し上がって下さい」

「わあ、鯛焼き! きなこ庵のは美味しいですよね」

「ご存知でしたか? 田舎町だからおいしいところは限られてきますよね」

「ふふ、そうですね」

「お母さん、ここにどうぞ」

「ありがとう」

母をソファに案内すると私も母の隣に座った。