相談室のきみと、秘密の時間

「そんなことは今まで考えたことなかった……」
「それにしてもいい天気だ……」

震える声で応えると、村越さんが片方の手を差し出して私の髪を優しく撫でてくれた。

「君はまだ若い。若いから迷う。それでいい」

それでも私は混乱し、恐怖を感じていた。
そしてこの時に初めてはっきりと、怒りを感じた。
誰もそんなことは、教えてくれなかった。
だからこんな風に。

でもまだ我慢できるはずだ。
私はそんなに弱い人間じゃない。

「もうすぐ着くぞ」

「あの、海では何をするんですか?」

「そうだね〜、カニでも捕まえる?」

「冗談ですよね」

「もちろん。君の話をゆっくり聞きたいと思ってたんだけど、根を詰め過ぎても疲れちゃうから、もし良ければ今日は僕の昔話をちょっとだけ聞いてくれるかな?」

「もちろんです。とても興味があります」

「ありがとう。自分のことを話すのも普通ではないけど。でもできれば君には話しておきたい」

はい、とだけ応えると村越さんはまた頭にポンと手を置いて笑った。