相談室のきみと、秘密の時間

村越さんはブラックコーヒーを飲みながら、少しの時間黙って何かを考えているように見えた。頭の中で色んな物事を整理しているようにも見えたし、掴みどころが無さすぎてただ宇宙人と交信できるか試しているようにも見えた。

「君の悩みの本質はもっと別のところにあるんだという感じがする。君が心から訴えたいことは本当に進路についてだけなのかな」

そう言われると今度は私は黙り込む番だった。
ーー違う、そんなことなんてどうでもいいんだ。そんなことより私は、

名前のつけようもない感情が溢れそうになる。
生まれてからずっと激しく求め続けているのに、一つだって手に入らなかった。

「心の中に砂漠みたいな場所があるんです。でもたまに水が湧いてきて、ああこれで大丈夫なんだって思った次の瞬間にはもう水はなくなっちゃうんです。

安っぽい希望なら、ちらつかせないでと思っているんです。でもその場所はいつも乾ききっていて、心から潤いを求めているんです。私はどうしようもなくて途方に暮れるんです」

「君は十分に気持ちを表現する力を持っている。少し訓練すればもっと上手くなる。そうすれば次に何をするべきか、何をしたいのかがわかるようになる。
そういう訓練が今の君に一番必要な気がしている。時間はいくらかかってもいいから一緒に少しずつやっていこう」

「よろしくお願いします」

「無理はしない。今はまだ立ち止まってもいい。必要な時には自然と感情があふれだし、体が動いてしまうと思う」

「あの、なんでそんなに一生懸命に話を聞いてくれるんですか?」

「君に希望を忘れないで欲しいから」

「分からないんです。どうしてそんな風に思ってくれるのか」

村越さんは息を一つ吐いて言った。

「ーー今はまだ気付かないでほしい。でも、君が僕の特別だからだ」

「それはどう言うーー?」

すると村越さんは人差し指を顔の前に当てながら言った。

「まだ秘密」