相談室のきみと、秘密の時間

離婚した母は女手一つで私を育てるために、文字通り朝から晩まで、夜勤の時はそれを逆にして、病院で看護師として働いていた。

まるで私の人生のために自分の人生を全て捧げ、命を削ってまで働いているような母に、私は感謝と言うより怖くなった。

誰かの人生の時間や自由をおかしているんだいう実感に自分がものすごく罪深い存在にすら思えた。

でも私はこんな感情を上手く母へ伝えることも、母を救うことも出来ないまま、ただただこれ以上の迷惑をかけないように、なるべく母に自分のことを話さなくなった。

そうすると友達や親戚、誰にも本音を話さなくなった。
そうして今日まで本当の自分の気持ちに蓋をしていたのだと気が付いた。
まるではじめて自分をさらけ出しているようなそんな実感さえあった。

「確かにいま立ち止まっているかも」

「君は悩みに誠実に向き合っていると思う。進路が決まらなければ、不安になるしどこを向けばいいか分からないから迷子みたいに取り尽くしまもなくなるだろう」

「どうすれば進路が決まりますかね」

「最初に言ったけれど、それを決めるのはどんなに苦しくても君自身でやらなければ意味がないと思う。例えば今君に東大に行けばいい、君には総理大臣になれる非凡な才能がある、と言ったらやる?」

「やりませんね、ていうかできません」

「そういうこと。他人に何を言われても自分自身が納得しない部分が少しでもあると、進んだ先で必ずつまづいてしまう。それでも我慢して進み続ければ続けるほど道はどんどん狭くなっていってまた何度もつまづいて取り返しのつかないほどひどい怪我をする。

だから自分で納得して進むのって本当に大事なんだ。もし納得した道なら狭くなったりしないし、道に迷ったりいくつかの道があっても、多分こっちに行けばいいって自分で分かる」

「私はこれまでの人生ではそれなりに納得する道を選んできたんだという実感があるんです。でも今は本当に分からない。怖いんです」