名乗った、とは少し違うと思うけど、なんだか今突っ込んだら話が逸れそうだからやめよう、うん。
「じゃあまずは僕からね!僕の名前は春森海純! 掃き溜めハウスの201号室にいるよ!ほら、次は灯音くんの番!」
ぽん、と彼、春森海純さんが肩を叩いたのは、先程わたしを思いっきり睨め付けてきたオレンジメッシュの彼だった。
そんな彼はひどく嫌そうに顔を歪ませて。……ちょっと、表情筋どうなってるのか教えてほしいくらいに。
「……なんで俺が、」
「────灯音くん。仲良くなって悪いことは、ないよね?」
読めない笑みを浮かべたままの春森海純さんは、彼へ何かぞっとするような雰囲気を保ったまま話しかけたものだから、彼も言うに言えなくなったようで。
小さくため息をついたのち、明後日の方向を向きながらぽそりと言う。
「……夏入灯音。202号室」
「ごっめんね〜?灯音くん、今日機嫌悪いみたい」
「お気になさらず。私という部外者がいきなり来たのでそれも当たり前かと」
……今のは確実に、間違えようのないほど、敵意がこもった皮肉だった。



