丁寧にお辞儀をした。私にしては、とても珍しく。
……だ、け、ど。
「─────出て行け」
開始早々脅されるとは、もうほんと、さすがとしか言いようがなかった。
私の横、詳しく言うと背後のドアへ耳が痛くなるほど強く叩きつけられた片腕。
その腕を辿って行きついた人は、鋭い眼光を最大限まで眇め、私を冷え冷えと見下ろしていた。
「ここは俺たち4人の寮だ。部外者が不法侵入してくるな」
「と言われましても、学院長からの許可は既に取っていまして」
ぴらり、と入寮許可証を提示すれば、その人はぴくりと夜が丸い輪郭を象ったような瞳を更に険しくさせて。
「……それは、もうすでに決定したことなのか?」
「はい。私と学院長との間で、先日契約が交わされました」
あくまで事務的に。
皆さんになんの感情も抱いていませんよ、という無害の人間を装った。
ここで早速気取られでもしたら、たまったものじゃない。
「……チッ、」
入寮許可証の効果か、その人はわざとらしく低く重い舌打ちをして、ばすん、と不機嫌を丸出しにしたままソファへと沈みこんだ。



