メディアの取材を受けている時、取材をしている人が「そういえば、烏丸シェフ。以前熱愛報道が出ていましたよね?」と唐突に切り込んできた。
「っ……!」
な、なんてことを聞くの……!? 全然料理の話と関係ないよね!?
「……それが何か?」
でも翡翠さんは何事も動じることなく話をしている。
「熱愛報道のお相手との交際は、事実ですか?」
交際相手の私が目の前にいるということに気付くことなく、メディアの人は話を進めてくる。
「ええ、事実ですよ」
「えっ!?」
言っちゃうの!? 翡翠さん、言っちゃうの!?
「事実、なんですね?」
「事実です。あの記事の通りですよ」
翡翠さんは、なんであんなに冷静でいられるのだろうか。
私なんてビックリして、オドオドしているといるというのに。
「ちなみに交際相手は元女優さんというウワサもあるようですが、それも事実ですか?」
「それは事実じゃないですね」
「ほう? では交際相手は元女優、ではないということですか?」
あの記者、めっちゃ聞いてくるじゃん……!
まるで取り調べを受けているかのような、そんな錯覚を起こしそうになる。
「はああ……なんか緊張しちゃう」
よくわからないけど、心臓の音がうるさくなる。
「どこからそんなウワサ出回ったかわかりませんけど、僕の交際相手はそこにいる゙彼女゙ですが」
「はい?彼女?」
「……ん?」
え? えっと……えっ?
「そこに立っている彼女が、僕の交際相手ですよ。記者さん」
「……えっ!?」



