距離感ゼロ 〜副社長と私の恋の攻防戦〜

「それじゃあ、そろそろ行きましょうか」

料理を食べ終わると、社長はそそくさと立ち上がる。
皆でロビーまで行くと、社長は翔を振り返った。

「お前は沙穂さんとお茶でも飲んで来なさい」

そう言うと社長同士で握手を交わし、邪魔者は退散とばかりにさっさとエントランスに向かう。

連絡したハイヤーが車寄せに到着し、芹奈が開けたドアから乗り込むと、社長は村尾と芹奈に声をかけた。

「二人もこのまま残ってくれるか?何かあったらフォローを頼むよ」
「かしこまりました」

二人でお辞儀をしながら、社長の車を見送った。

「さてと。では仲人夫婦として、若いお二人を見守りに行きますか」

顔を上げた村尾がおどけたように言う。

「やだ、村尾くん。若いお二人って、副社長の方が私達より年上だよ?」
「今日の俺達は熟年夫婦だからさ。ほら、行くぞ奥さん」
「はいはい。では参りましょうかね?お父さん」
「お父さん!?妙にリアルだな、母さんや」

あはは!と笑いながら、二人でロビーに戻った。