なんで私、こんな重要な場面でも染野くんのことを……っ!


目をつむり、少しだけ首を何度かふって、頭の中に現れた染野くんを追いやった。


い、今は彼に集中しないと……っ!


そう思って、もう一度顔を上げる。


端正な顔立ちをした、彼の頬は少し赤く染まっていて、その瞳はまっすぐに私をとらえていた。


どくん、と心臓が大きな音を立てる。


……私が見る限り、彼の言葉は嘘じゃないように思う。


でも……。


やっぱり、分からない。この人を見た記憶がない。


この人は、誰なんだろう……?


この人とは、どこかで話したことがあったっけ……?


忘れてしまっているなら、申し訳ないよ……っ。