私たちが通っていた高校近くのファミレスにて。高校生には全く見えない大人(社会人に見えてるといいけど)4人──つまるところのなずな、西園寺くん、私、凌 で大人気もなく、ドリンクバーでジュースを6種類混ぜて遊んでいた。
恐ろしいことに、高校卒業から6年が経ってしまったが、ようやくre:ダブルデートが実現できたのだ。
周りからは、デートというよりかはゲームかなんかのオフ会に見えてるであろうことはそっと心にしまっておく。
念願のダブルデートが決行出来たのも全部、この6年間、ひたすらに凌に隠すことなく好意を伝え続けた私の努力の賜物である。
……やべ、今めっちゃ凌に睨まれてる気がする。冗談のつもりだったんだけど、察しだけが良すぎる凌のせいで、普通に空気が凍っている。
てか、美形は人を睨んじゃいけないんだってば、凌くん。
「それにしてもほんっと久しぶりだねー!」
炭酸だったかフルーツだったかも分からなくなってしまった元ジュースを飲みながら、なずなが明るく笑う。
先程、野菜ジュースに紅茶を注いでいるカオスな瞬間を目撃してしまったのだが、本当の本当に大丈夫だろうか。
「最後に4人揃ったのって卒業式以来だっけ?」
「いや、紫乃と俺の結婚式以来」
「馬鹿、結婚式も卒業式もたいして変わらないでしょ」
そうなのだ。私の「19歳の誕生日〜」な例の持契約のおかげで、凌との結婚式は卒業式の数日後に行われた。
ちなみに、凌は部活の友達から、生き急ぐなだの、お前には10年早いだの散々に言われていた。やはり部活の面々には本性がばっちりバレているようで、みんな口では大バッシングしてはいるものの、凌に向ける表情はどれも優しかった。
「紫乃たちは何百年経っても、相変わらず仲がよろしいようで何よりです」
「凌は今、社会人バスケしてるんだっけ?」
「社会人野球みたいに言うな」
「えー、間違ってはないよ?」
西園寺くんと凌も、何億年経っても仲が良いようで、ちょくちょく2人で公園に行ってはバスケをして、老若男女問わずちやほやされているそうだ。
記者として本物の情報屋になってしまったなずな曰く、2人とも熱烈なアプローチをかけられてもガン無視しているので全く問題ないらしい。
「それにしても、こんなに全員の都合を合わせるのが大変とは思わなかったなぁ…」
今回のオフ会……じゃなくてダブルデート実行委員長を務めてくれたなずなが、むー、とため息をつく。
いや、「むー」はため息じゃな…。
ふと脳内をよぎった自分の思考に、心の中で首を思いっきり横に振る。
考えたら負け、考えたら負け。
私が脳内で冷静なツッコミをしようとしていたとは、きっと夢にも思わないであろう西園寺くんはなずなの言葉に、にやりと笑みを浮かべた。
「その間に僕、なずなちゃんにプロポーズしちゃったくらいだからね」
「か、奏太くん!」
うん、どんな惚気が飛び出すかと思えば、とんでもねぇビックニュースじゃんか。
西園寺くんはプロポーズした、としか言っていないが、この2人が上手くいかないわけがない。
しかも6年前、私がブーケトスで投げた花束をキャッチしてくれたのはちゃんとなずなだったし。
「えぇ〜!?そうなの!?おめでとう!!」
「ちょっ、紫乃、なんであたしがオッケーした前提なのよ」
私が大はしゃぎしてお祝いの言葉を述べると、人前ではそこまで素直になれないなずなは、顔を真っ赤にして文句を言ってきた。可愛い。
「え〜?だってなずな、西園寺くんの事大好きでしょ〜?」
「ふふ、そうなの?僕もなずなちゃんの事大好きだよ」
「あたしも……好き」
私がからかい、西園寺くんが愛を囁き、凌が公害レベルのうるさい視線を向け、なずなが吐かされる。
高校3年の冬、どこかで見たような光景である。役職は変わってるけど。
「これやるって知ってたらクラッカー持ってきたんだけどな……」
ガチ恋距離で私の隣に座っている…いや、くっついてる凌がぼそっと呟く。たまにはいいこと言うじゃん。
「『たまには』は余計でしょ、紫乃ちゃん?」
「その読解力、勉強で生かしてくれよと何度思ったか……」
凌くんは、今日も私の考えている事を、非常に正確に読み取ってくる。
かなり怖いスキルだとは思うが、この状況に慣れてしまった自分が怖い。
そのうち、わざわざ言わなくても伝わるとかマジ便利、なんて考えられるようになってしまったらどうしよう。割と近い未来に起こる予感がしてならない。
「紫乃さん。お話中邪魔してごめんね。ひとつ、頼み事があるんだけど聞いてくれる?」
「いいよ」
爽やかな笑顔で話しかけてきた西園寺くんに、まず美貌から勝てないものの私も、爽やかっぽい笑みを浮かべる。
この丁寧さは、きっとあれだ。なずな関連だ。普段の物腰も穏やかで柔らかな西園寺くんではあるものの(逆ナンには超絶冷たいって聞いた事あるんだよね、怖いね)、凌と一緒に過ごしている間に自分にも身についてしまった直感がそう告げている。
「実はね、なずなちゃんと僕の結婚式のスピーチ、引き受けて欲しくて」
「高くつくぞ?」
凌は、にやりと挑発的にそう告げる。
やっぱこの人、どんな表情も似合うよなーー!!じゃなくて。
新郎新婦相手に挑発スマイルは絶対に違う。少し気が早いような気もするが。
しかも凌と私のそれぞれの親友の結婚式だ。既知の事実ではあるが、凌はやっぱり馬鹿なんじゃないだろうか。
そんな凌の失言をカバーするように、私は少し大袈裟に言い放った。
「タダより高い物はないって言うからね。もちろん最高額の0円ですよー!」
「やったー!!紫乃、ありがとう」
きっと、これまでもこれからも、私はずっとこうして凌を助けまくり、助けてもらうんだろうなと自然に予想がついてしまう。
最初は幼馴染として。そのうち友達として。いつしか契約上、ついでに本物の恋人になって、夫婦にまでなっちゃって。色々ありすぎて、もうよく分かんない。
1分考えても分からないことは、どれだけ時間を費やしても仕方ない。テストじゃないけど。
細かいところはさておき、私たちの未来は、まだまだ続いていく。
みんなで守り抜いたこの街と──。
ーfin.ー
……なーんて終わり方が出来たら、おそらくかっこよかったんだけど、残念なことに私は、微塵も世界を救ってはいない。
救ったとすれば、凌のテスト全赤点回避とかくだらないものばっかり。
エンディングに相応しい言葉とやらは見つからないし、もはやしっくりくるものもない気がする。
だってまだ、人生の中盤にすら差し掛かってないし。
ああ、でも。ここに置くのにちょうど良さそうなのが1つはあるかも。
例えばさ。
私のピンチに手を差し伸べてくれた、誰よりも大切な幼馴染は、何よりも何よりも大切な存在になりました!!
これも凌にはまだ言ってないけれど、きっと全部バレてるよね。
ーほんとのほんとにfin.ー
恐ろしいことに、高校卒業から6年が経ってしまったが、ようやくre:ダブルデートが実現できたのだ。
周りからは、デートというよりかはゲームかなんかのオフ会に見えてるであろうことはそっと心にしまっておく。
念願のダブルデートが決行出来たのも全部、この6年間、ひたすらに凌に隠すことなく好意を伝え続けた私の努力の賜物である。
……やべ、今めっちゃ凌に睨まれてる気がする。冗談のつもりだったんだけど、察しだけが良すぎる凌のせいで、普通に空気が凍っている。
てか、美形は人を睨んじゃいけないんだってば、凌くん。
「それにしてもほんっと久しぶりだねー!」
炭酸だったかフルーツだったかも分からなくなってしまった元ジュースを飲みながら、なずなが明るく笑う。
先程、野菜ジュースに紅茶を注いでいるカオスな瞬間を目撃してしまったのだが、本当の本当に大丈夫だろうか。
「最後に4人揃ったのって卒業式以来だっけ?」
「いや、紫乃と俺の結婚式以来」
「馬鹿、結婚式も卒業式もたいして変わらないでしょ」
そうなのだ。私の「19歳の誕生日〜」な例の持契約のおかげで、凌との結婚式は卒業式の数日後に行われた。
ちなみに、凌は部活の友達から、生き急ぐなだの、お前には10年早いだの散々に言われていた。やはり部活の面々には本性がばっちりバレているようで、みんな口では大バッシングしてはいるものの、凌に向ける表情はどれも優しかった。
「紫乃たちは何百年経っても、相変わらず仲がよろしいようで何よりです」
「凌は今、社会人バスケしてるんだっけ?」
「社会人野球みたいに言うな」
「えー、間違ってはないよ?」
西園寺くんと凌も、何億年経っても仲が良いようで、ちょくちょく2人で公園に行ってはバスケをして、老若男女問わずちやほやされているそうだ。
記者として本物の情報屋になってしまったなずな曰く、2人とも熱烈なアプローチをかけられてもガン無視しているので全く問題ないらしい。
「それにしても、こんなに全員の都合を合わせるのが大変とは思わなかったなぁ…」
今回のオフ会……じゃなくてダブルデート実行委員長を務めてくれたなずなが、むー、とため息をつく。
いや、「むー」はため息じゃな…。
ふと脳内をよぎった自分の思考に、心の中で首を思いっきり横に振る。
考えたら負け、考えたら負け。
私が脳内で冷静なツッコミをしようとしていたとは、きっと夢にも思わないであろう西園寺くんはなずなの言葉に、にやりと笑みを浮かべた。
「その間に僕、なずなちゃんにプロポーズしちゃったくらいだからね」
「か、奏太くん!」
うん、どんな惚気が飛び出すかと思えば、とんでもねぇビックニュースじゃんか。
西園寺くんはプロポーズした、としか言っていないが、この2人が上手くいかないわけがない。
しかも6年前、私がブーケトスで投げた花束をキャッチしてくれたのはちゃんとなずなだったし。
「えぇ〜!?そうなの!?おめでとう!!」
「ちょっ、紫乃、なんであたしがオッケーした前提なのよ」
私が大はしゃぎしてお祝いの言葉を述べると、人前ではそこまで素直になれないなずなは、顔を真っ赤にして文句を言ってきた。可愛い。
「え〜?だってなずな、西園寺くんの事大好きでしょ〜?」
「ふふ、そうなの?僕もなずなちゃんの事大好きだよ」
「あたしも……好き」
私がからかい、西園寺くんが愛を囁き、凌が公害レベルのうるさい視線を向け、なずなが吐かされる。
高校3年の冬、どこかで見たような光景である。役職は変わってるけど。
「これやるって知ってたらクラッカー持ってきたんだけどな……」
ガチ恋距離で私の隣に座っている…いや、くっついてる凌がぼそっと呟く。たまにはいいこと言うじゃん。
「『たまには』は余計でしょ、紫乃ちゃん?」
「その読解力、勉強で生かしてくれよと何度思ったか……」
凌くんは、今日も私の考えている事を、非常に正確に読み取ってくる。
かなり怖いスキルだとは思うが、この状況に慣れてしまった自分が怖い。
そのうち、わざわざ言わなくても伝わるとかマジ便利、なんて考えられるようになってしまったらどうしよう。割と近い未来に起こる予感がしてならない。
「紫乃さん。お話中邪魔してごめんね。ひとつ、頼み事があるんだけど聞いてくれる?」
「いいよ」
爽やかな笑顔で話しかけてきた西園寺くんに、まず美貌から勝てないものの私も、爽やかっぽい笑みを浮かべる。
この丁寧さは、きっとあれだ。なずな関連だ。普段の物腰も穏やかで柔らかな西園寺くんではあるものの(逆ナンには超絶冷たいって聞いた事あるんだよね、怖いね)、凌と一緒に過ごしている間に自分にも身についてしまった直感がそう告げている。
「実はね、なずなちゃんと僕の結婚式のスピーチ、引き受けて欲しくて」
「高くつくぞ?」
凌は、にやりと挑発的にそう告げる。
やっぱこの人、どんな表情も似合うよなーー!!じゃなくて。
新郎新婦相手に挑発スマイルは絶対に違う。少し気が早いような気もするが。
しかも凌と私のそれぞれの親友の結婚式だ。既知の事実ではあるが、凌はやっぱり馬鹿なんじゃないだろうか。
そんな凌の失言をカバーするように、私は少し大袈裟に言い放った。
「タダより高い物はないって言うからね。もちろん最高額の0円ですよー!」
「やったー!!紫乃、ありがとう」
きっと、これまでもこれからも、私はずっとこうして凌を助けまくり、助けてもらうんだろうなと自然に予想がついてしまう。
最初は幼馴染として。そのうち友達として。いつしか契約上、ついでに本物の恋人になって、夫婦にまでなっちゃって。色々ありすぎて、もうよく分かんない。
1分考えても分からないことは、どれだけ時間を費やしても仕方ない。テストじゃないけど。
細かいところはさておき、私たちの未来は、まだまだ続いていく。
みんなで守り抜いたこの街と──。
ーfin.ー
……なーんて終わり方が出来たら、おそらくかっこよかったんだけど、残念なことに私は、微塵も世界を救ってはいない。
救ったとすれば、凌のテスト全赤点回避とかくだらないものばっかり。
エンディングに相応しい言葉とやらは見つからないし、もはやしっくりくるものもない気がする。
だってまだ、人生の中盤にすら差し掛かってないし。
ああ、でも。ここに置くのにちょうど良さそうなのが1つはあるかも。
例えばさ。
私のピンチに手を差し伸べてくれた、誰よりも大切な幼馴染は、何よりも何よりも大切な存在になりました!!
これも凌にはまだ言ってないけれど、きっと全部バレてるよね。
ーほんとのほんとにfin.ー



