12月24日。俗に言うクリスマスイブってやつだ。恋人たちがバレンタインの次くらいにわちゃわちゃしてる日だと個人的には思っている。
当然と言えばそれまでなのだが、恋人同士の定番イベントが大好きな凌がデート計画を立てない訳がない。
という訳で私は、イルミネーションデートをするべく、街に繰り出していた。
「ねぇ〜、おねーさん、俺、クリスマスイブを、このむさ苦しい野郎どもと過ごしたくないんだって。頼むよ〜」
「だから彼氏と待ち合わせしてるって何回言えば分かるんですか!??」
「そうは言っても“彼氏くん”、もう5分は来てないよ?」
「あいつ馬鹿なんで、たぶん道に迷ってるだけだと思います」
そしてなぜか、ナンパと思しき大学生たちにしつこく話しかけられていた。
なんでだよ!!!と叫び出したいのはやまやまだが、この悲劇の元凶は私なので、叫ぶ権利は凌くんに譲っておく。
「え〜、馬鹿な彼氏とか不満しかないでしょ?やっぱ俺らと遊ぼーよ」
「お断りします」
いつもなら、凌が私の家の前まで迎えに来てくれる&送ってくれるので、こんな事態には絶対に陥らない。
ただ、今日は私が、学校に忘れた教科書を取りに行ってたのだ。デート会場は、学校から近場だったため、そこで待ち合わせをすることにした。
ちなみに凌は、塾の3日間限定冬季講習にぶち込まれている。いい気味だ。なんでも親に、特待生試験の勉強もある私に負担をかけないように言われたんだとか。
凌の10倍は真面目に勉強している幼馴染として、夏休みに私の宿題を写そうとした凌くんがちゃんと勉強していることを、心から願っている。
「ねぇ、頼むって」
「もしもしー、凌?今どこ?」
ナンパたちの声をフル無視して凌に電話をかける。
凌は、慣れない場所で迷子になるタイプだったし、今回もきっとそうだろう。
と思っていたのだが、意外なことに、答えはすぐ近くから返ってきた。
「紫乃の後ろ」
「……え?」
というか耳元から返ってきた。
それにしても私の後ろって……。メリーさんかよ。
凌がメリーさんなのはさておき、さっきの凌の声、携帯当ててる方と逆の耳から聞こえてきたんだけど。
え?おかしくね?なんて私が動揺している間に、いつもと変わらない体温が後ろから私を包み込む。
あ、これ、本物の凌だわ。
「紫乃、遅くなってほんとごめんね」
「ヒーローは遅れてやってくるのマジでやめて欲しい」
「あはは、ごめんって」
ナンパたちに強制連行される前に、凌が来てくれただけマシだし、本当は感謝するべきところなのだろうが、私の口から発せられたのはちょっとした不満だった。
私の誰宛てかも怪しい文句に対して、軽く笑った凌が許せないけど、そういうところも好きだ。
ついでに笑い方と笑い声がスマートで、いちいち顔と顔と声がいいのも非常に許しがたい。これからも続けて欲しい。
「え、もしかしてお姉さんの彼氏って」
「まだいたんだ」
再び気配を空気から人間に戻して話しかけてきたナンパに私は、出来るだけ冷たい口調で返す。もう諦めてくれたかなって思ってたのに。
でも、最初は3人いたはずのナンパが1人になっている。
凌が本当に現れたことで2人追い払えたってとこだろう。ぼっちナンパも一緒に退散してくれれば良かったのに。
くっそ、懲りねえなこいつ……あ、口が滑った。
「俺への扱い酷くない???」
「大事な彼女にナンパしてくれやがった非常識に優しくする義理なんてねぇよ」
それにしても凌、これはかなーり怒ってるなぁ…。
いつもより真剣な表情がかっこいいし、語彙力増えてる気がしてびっくりだし、オーラ怖いし、私のために怒ってくれたのが嬉しいしで、気持ちがぐちゃぐちゃになるけど。
こういう時の凌は、普段の優しい口調が完璧に崩れて、その美貌を極限まで尖らせたような口調と雰囲気を放つんだよね。
ナンパの顔から血の気が少しずつ引いていく。
分かる。美人が怒った時って怖いよね。私も守られてる側なのに震えが止まんないもん。
「お前ら、お、覚えてろよ!!」
引き際を悟ったであろうナンパは、お馴染みの捨て台詞を噛みながら言い放つと走り去っていった。
ねぇ、それ、ナンパというよりゴロツキのセリフじゃない??
「俺のせいで紫乃に怖い思いさせちゃったよね、ごめんね」
えっと……それは、「俺が遅かったせいで、ナンパどもに付きまとわれて怖かったよね」ですかね?
はたまた「俺がガチギレしたせいで、紫乃も怖かったよね」って?
でもたぶん、後者は無自覚だろうし前者だな。
「あー、まぁ大丈夫。ところで、もしかしなくても道に迷ってた?」
「うーん、まぁそんなとこかな」
「一応言っとくけどそれ、全然ごまかせてないからね」
「え、そうなの!?」
凌との会話はやっぱり気が楽で、なんか安心する。
凌くんにはこれまで、不吉以外の何物でもない鉢植えをお見舞いに持って来られたり、大事な告白の場面で誤字られたりしてきた。
ちなみに心が狭い私は、未だにどれも根に持っている。
それでもなお、私の隣に居て欲しいのも、その位置を始めからずっと陣取っていたのも、全部凌なのだと改めて実感する。
凌も私と同じだったらいいな…。
そっと願いながら見つめた凌の横顔は、赤く染まり始めた夕陽に照らされて、それはそれは美しかったものの、いつもより少しだけ、私だけが気づけるくらい、強張って見えた。
当然と言えばそれまでなのだが、恋人同士の定番イベントが大好きな凌がデート計画を立てない訳がない。
という訳で私は、イルミネーションデートをするべく、街に繰り出していた。
「ねぇ〜、おねーさん、俺、クリスマスイブを、このむさ苦しい野郎どもと過ごしたくないんだって。頼むよ〜」
「だから彼氏と待ち合わせしてるって何回言えば分かるんですか!??」
「そうは言っても“彼氏くん”、もう5分は来てないよ?」
「あいつ馬鹿なんで、たぶん道に迷ってるだけだと思います」
そしてなぜか、ナンパと思しき大学生たちにしつこく話しかけられていた。
なんでだよ!!!と叫び出したいのはやまやまだが、この悲劇の元凶は私なので、叫ぶ権利は凌くんに譲っておく。
「え〜、馬鹿な彼氏とか不満しかないでしょ?やっぱ俺らと遊ぼーよ」
「お断りします」
いつもなら、凌が私の家の前まで迎えに来てくれる&送ってくれるので、こんな事態には絶対に陥らない。
ただ、今日は私が、学校に忘れた教科書を取りに行ってたのだ。デート会場は、学校から近場だったため、そこで待ち合わせをすることにした。
ちなみに凌は、塾の3日間限定冬季講習にぶち込まれている。いい気味だ。なんでも親に、特待生試験の勉強もある私に負担をかけないように言われたんだとか。
凌の10倍は真面目に勉強している幼馴染として、夏休みに私の宿題を写そうとした凌くんがちゃんと勉強していることを、心から願っている。
「ねぇ、頼むって」
「もしもしー、凌?今どこ?」
ナンパたちの声をフル無視して凌に電話をかける。
凌は、慣れない場所で迷子になるタイプだったし、今回もきっとそうだろう。
と思っていたのだが、意外なことに、答えはすぐ近くから返ってきた。
「紫乃の後ろ」
「……え?」
というか耳元から返ってきた。
それにしても私の後ろって……。メリーさんかよ。
凌がメリーさんなのはさておき、さっきの凌の声、携帯当ててる方と逆の耳から聞こえてきたんだけど。
え?おかしくね?なんて私が動揺している間に、いつもと変わらない体温が後ろから私を包み込む。
あ、これ、本物の凌だわ。
「紫乃、遅くなってほんとごめんね」
「ヒーローは遅れてやってくるのマジでやめて欲しい」
「あはは、ごめんって」
ナンパたちに強制連行される前に、凌が来てくれただけマシだし、本当は感謝するべきところなのだろうが、私の口から発せられたのはちょっとした不満だった。
私の誰宛てかも怪しい文句に対して、軽く笑った凌が許せないけど、そういうところも好きだ。
ついでに笑い方と笑い声がスマートで、いちいち顔と顔と声がいいのも非常に許しがたい。これからも続けて欲しい。
「え、もしかしてお姉さんの彼氏って」
「まだいたんだ」
再び気配を空気から人間に戻して話しかけてきたナンパに私は、出来るだけ冷たい口調で返す。もう諦めてくれたかなって思ってたのに。
でも、最初は3人いたはずのナンパが1人になっている。
凌が本当に現れたことで2人追い払えたってとこだろう。ぼっちナンパも一緒に退散してくれれば良かったのに。
くっそ、懲りねえなこいつ……あ、口が滑った。
「俺への扱い酷くない???」
「大事な彼女にナンパしてくれやがった非常識に優しくする義理なんてねぇよ」
それにしても凌、これはかなーり怒ってるなぁ…。
いつもより真剣な表情がかっこいいし、語彙力増えてる気がしてびっくりだし、オーラ怖いし、私のために怒ってくれたのが嬉しいしで、気持ちがぐちゃぐちゃになるけど。
こういう時の凌は、普段の優しい口調が完璧に崩れて、その美貌を極限まで尖らせたような口調と雰囲気を放つんだよね。
ナンパの顔から血の気が少しずつ引いていく。
分かる。美人が怒った時って怖いよね。私も守られてる側なのに震えが止まんないもん。
「お前ら、お、覚えてろよ!!」
引き際を悟ったであろうナンパは、お馴染みの捨て台詞を噛みながら言い放つと走り去っていった。
ねぇ、それ、ナンパというよりゴロツキのセリフじゃない??
「俺のせいで紫乃に怖い思いさせちゃったよね、ごめんね」
えっと……それは、「俺が遅かったせいで、ナンパどもに付きまとわれて怖かったよね」ですかね?
はたまた「俺がガチギレしたせいで、紫乃も怖かったよね」って?
でもたぶん、後者は無自覚だろうし前者だな。
「あー、まぁ大丈夫。ところで、もしかしなくても道に迷ってた?」
「うーん、まぁそんなとこかな」
「一応言っとくけどそれ、全然ごまかせてないからね」
「え、そうなの!?」
凌との会話はやっぱり気が楽で、なんか安心する。
凌くんにはこれまで、不吉以外の何物でもない鉢植えをお見舞いに持って来られたり、大事な告白の場面で誤字られたりしてきた。
ちなみに心が狭い私は、未だにどれも根に持っている。
それでもなお、私の隣に居て欲しいのも、その位置を始めからずっと陣取っていたのも、全部凌なのだと改めて実感する。
凌も私と同じだったらいいな…。
そっと願いながら見つめた凌の横顔は、赤く染まり始めた夕陽に照らされて、それはそれは美しかったものの、いつもより少しだけ、私だけが気づけるくらい、強張って見えた。



