長いようで短かった夏休みも定期テストも終わり、季節は秋へと移り変わろうとしていた。私にとって、今年の秋はちょっと特別だ。
引退前最後の文化祭。軽音部に所属する私は、2日目の昼に体育館でライブをすることが先日決まったばかりだ。
こうなることは何となく予想ついてたけど。ちなみに、うちの学校の文化祭は少し大規模で4日間ある。
うちは私立校だから、イベントにはどこまでも気合いが入っているのだ。当然、沢山の人が私たちの演奏を聴きにくるだろう。
せっかく来てくれたお客さんに半端な演奏は聴かせられない。そう思った(というか焦った)メンバーで自主的に集まり、今はみんなで練習している最中だ。
話は変わるが、私は、中学の頃吹奏楽部でトランペットを吹いており、高校でも吹部に入る予定だった。ただ、例の事故によって6月に復学した際にはとても入りにくい状態になっていた。
そんな私に声をかけてくれたのが、なずなだった。
𓈒𓏸𓈒 ☽ ꙳𓂃 ☕︎ 𓈒𓏸𓈒꙳
「紫乃ちゃん、部活どこ入るかとか考えてる?」
この時の私たちはまだ、よく話すだけのクラスメイトでお互いをちゃん付けしていた。今となっては何だか変な気持ちだ。
「あ、なずなちゃん。私、ほんとは吹部入りたかったんだけど、なんか気まずくて…」
「分かる分かる!!うちの学校の吹部って閉鎖的ではあるけど、めちゃくちゃ結束強いよね」
なずなの言う通り、うちの吹部は部員同士は本当に仲が良いけど、他の部活の部員とはあまり交流がなかったように思う。
中学では、吹部はみんなから好かれる人格者が多かった気がするが、やっぱり学校ごとに特徴は異なるのだろう。
「ね……。不思議だよね。結束強いのは良いことだとは思うけど」
「ねぇ、紫乃ちゃん。突然で悪いんだけど、紫乃ちゃんさえ良ければあたしたちのバンド、入ってくれないかな?」
私が遠慮しすぎないように、自分たち側からのお願いという形を取るなずなは、本当にいい子だと思う。
そして、彼女からの誘いを断る理由もなかった私は、すぐに心の中で軽音部への入部を決めた。
「え…いいの?」
「もちろん!!吹部志望だったってことは何か楽器出来たりする?」
「あ、うん。中学の頃はトランペット吹いてたよ」
トランペットはバンドにはふさわしくないのではないか、と私が少し気後れしながらも答えると、なずなはその綺麗な瞳をキラキラさせながら言ってくれた。
「トランペットとか超かっこいいじゃん!!!すごーい!!!!」
「そう?私的には、バンドに入るにはちょっと違うかもって思ってたんだけど……」
「ううん!!逆にありがとうって感じ」
この時はなずなの言っていることの意味をあまり理解できず、曖昧に頷いてしまった。
管楽器への憧れを捨てられないドラム担当が管楽器奏者をバンドに呼び込むべく、練習のたびにメンバーを説得しまくって練習が疎かになっていた、なんてことをこの時の私が知る由もないのだった。
𓈒𓏸𓈒 ☽ ꙳𓂃 ☕︎ 𓈒𓏸𓈒꙳
「ねぇ、紫乃。昨日家で動画撮ってみたんだけど、音程合ってるか聴いて欲しくて…」
「私でよければ」
ボーカル担当のなずなは、もちろん歌が上手い。
以前カラオケに行った時、凌の3倍くらいの点数を叩き出していた記憶がある。ちなみに凌は、音楽を始めとする芸術全般の心得はもちろん持ち合わせていない。
とは言っているものの、実は私も芸術方面はあまり得意ではない。中学、高校と音楽系の部活に入っていたため、音楽ならクラスの中でもギリギリ上位にランクイン出来るかなって程度だ。
西園寺くんは、本人曰く普通らしいが、全然そんなことないと思う。中学時代の音楽の成績も最高評価とのことなので、恐ろしい。
そして、なずなも歌は上手いし、ピアノも弾けるって聞いたことあるし…。このカップル、音楽方面最強だな。
凌にももうちょっと頑張って欲しいなんて言ったら、怒られるだろうか。
いや、この前告白されてしまったから、若干意識しているとか、そういうことでは断じてない。
そんなことを考えている間に、なずなが流してくれていた動画は終わっていた。ざっと聴いてみても、特に違和感はなかった気がする。
「えっと、どうかな?ちゃんと音程取れてる?」
「うん!めっちゃ綺麗だったよ」
「ほんと!?大丈夫そう?」
今日はいつにも増して必死ななずなが本当に可愛い。
たぶん、西園寺くんにいいところを見せるためだろう。最近はいつもよりおしゃれに気を使っているっぽいし。
やっぱり、恋の力って大きいんだろうな。
本番はどうせ凌も来てくれるだろうし、私だって頑張らないと。
もちろん、深い意味はないんだけど。
凌には行けたら行くとは言われているが、たぶん…いや、間違いなく来てくれると私は信じている。
多少の恥ずかしさはあるけど、せっかく準備したんだから見て欲しい。
先ほども言ったが、深い意味なんてない。
私の中での凌は、誰よりも大切な幼馴染のままなのだ。そう、自分に言い聞かせた。
引退前最後の文化祭。軽音部に所属する私は、2日目の昼に体育館でライブをすることが先日決まったばかりだ。
こうなることは何となく予想ついてたけど。ちなみに、うちの学校の文化祭は少し大規模で4日間ある。
うちは私立校だから、イベントにはどこまでも気合いが入っているのだ。当然、沢山の人が私たちの演奏を聴きにくるだろう。
せっかく来てくれたお客さんに半端な演奏は聴かせられない。そう思った(というか焦った)メンバーで自主的に集まり、今はみんなで練習している最中だ。
話は変わるが、私は、中学の頃吹奏楽部でトランペットを吹いており、高校でも吹部に入る予定だった。ただ、例の事故によって6月に復学した際にはとても入りにくい状態になっていた。
そんな私に声をかけてくれたのが、なずなだった。
𓈒𓏸𓈒 ☽ ꙳𓂃 ☕︎ 𓈒𓏸𓈒꙳
「紫乃ちゃん、部活どこ入るかとか考えてる?」
この時の私たちはまだ、よく話すだけのクラスメイトでお互いをちゃん付けしていた。今となっては何だか変な気持ちだ。
「あ、なずなちゃん。私、ほんとは吹部入りたかったんだけど、なんか気まずくて…」
「分かる分かる!!うちの学校の吹部って閉鎖的ではあるけど、めちゃくちゃ結束強いよね」
なずなの言う通り、うちの吹部は部員同士は本当に仲が良いけど、他の部活の部員とはあまり交流がなかったように思う。
中学では、吹部はみんなから好かれる人格者が多かった気がするが、やっぱり学校ごとに特徴は異なるのだろう。
「ね……。不思議だよね。結束強いのは良いことだとは思うけど」
「ねぇ、紫乃ちゃん。突然で悪いんだけど、紫乃ちゃんさえ良ければあたしたちのバンド、入ってくれないかな?」
私が遠慮しすぎないように、自分たち側からのお願いという形を取るなずなは、本当にいい子だと思う。
そして、彼女からの誘いを断る理由もなかった私は、すぐに心の中で軽音部への入部を決めた。
「え…いいの?」
「もちろん!!吹部志望だったってことは何か楽器出来たりする?」
「あ、うん。中学の頃はトランペット吹いてたよ」
トランペットはバンドにはふさわしくないのではないか、と私が少し気後れしながらも答えると、なずなはその綺麗な瞳をキラキラさせながら言ってくれた。
「トランペットとか超かっこいいじゃん!!!すごーい!!!!」
「そう?私的には、バンドに入るにはちょっと違うかもって思ってたんだけど……」
「ううん!!逆にありがとうって感じ」
この時はなずなの言っていることの意味をあまり理解できず、曖昧に頷いてしまった。
管楽器への憧れを捨てられないドラム担当が管楽器奏者をバンドに呼び込むべく、練習のたびにメンバーを説得しまくって練習が疎かになっていた、なんてことをこの時の私が知る由もないのだった。
𓈒𓏸𓈒 ☽ ꙳𓂃 ☕︎ 𓈒𓏸𓈒꙳
「ねぇ、紫乃。昨日家で動画撮ってみたんだけど、音程合ってるか聴いて欲しくて…」
「私でよければ」
ボーカル担当のなずなは、もちろん歌が上手い。
以前カラオケに行った時、凌の3倍くらいの点数を叩き出していた記憶がある。ちなみに凌は、音楽を始めとする芸術全般の心得はもちろん持ち合わせていない。
とは言っているものの、実は私も芸術方面はあまり得意ではない。中学、高校と音楽系の部活に入っていたため、音楽ならクラスの中でもギリギリ上位にランクイン出来るかなって程度だ。
西園寺くんは、本人曰く普通らしいが、全然そんなことないと思う。中学時代の音楽の成績も最高評価とのことなので、恐ろしい。
そして、なずなも歌は上手いし、ピアノも弾けるって聞いたことあるし…。このカップル、音楽方面最強だな。
凌にももうちょっと頑張って欲しいなんて言ったら、怒られるだろうか。
いや、この前告白されてしまったから、若干意識しているとか、そういうことでは断じてない。
そんなことを考えている間に、なずなが流してくれていた動画は終わっていた。ざっと聴いてみても、特に違和感はなかった気がする。
「えっと、どうかな?ちゃんと音程取れてる?」
「うん!めっちゃ綺麗だったよ」
「ほんと!?大丈夫そう?」
今日はいつにも増して必死ななずなが本当に可愛い。
たぶん、西園寺くんにいいところを見せるためだろう。最近はいつもよりおしゃれに気を使っているっぽいし。
やっぱり、恋の力って大きいんだろうな。
本番はどうせ凌も来てくれるだろうし、私だって頑張らないと。
もちろん、深い意味はないんだけど。
凌には行けたら行くとは言われているが、たぶん…いや、間違いなく来てくれると私は信じている。
多少の恥ずかしさはあるけど、せっかく準備したんだから見て欲しい。
先ほども言ったが、深い意味なんてない。
私の中での凌は、誰よりも大切な幼馴染のままなのだ。そう、自分に言い聞かせた。



