「なずなちゃん、ひとつ提案があるんだけど」
突然耳元で囁かれた好きな人の声に、鼓動が速くなるのを感じなから、何事もなかったかのようにあたしは後ろを振り向く。
「どうしたの?西園寺くん」
やはりあたしの後ろには予想通りの人物がいて、その整った顔に低レベルないたずらを企むちびっこのような笑みを浮かべていた。
そして、彼は秘密基地を教えるかのように、あたしにこう告げる。
「ね、今日の晩ごはん、僕たち2人で作らない?」
「…え」
それは……西園寺くんと2人っきり、という意味?あたしとしては嬉しいんだけど、でも、なんであたしを?
「あ、ほら、凌の馬鹿は紫乃さんと2人きりになりたいだろうし。売れる恩は売っとこうと思って」
西園寺くんは、いつもより少し早口で理由を並べていく。
ふーん、そうなんだ。水瀬くんが紫乃に告白するとでも思って背中を押そうとしてるの?
そんなことしても無駄なのに。だって紫乃と水瀬くん、絶対付き合ってるもん。紫乃にはデート用と思しき勝負服選びを手伝わされたし。
自分のことをめっちゃ想ってくれる可愛い彼女がいる水瀬くんに恩を売る暇があるなら、その時間をあたしにくれたらいいのに。
「えっと、その、なずなちゃんは、僕と2人きり、になるけどそれでも大丈夫?もし嫌だったら全然断ってくれていいからね??なずなちゃんに嫌な思いさせてまで凌に貸しを作りたい訳じゃないから」
いつも通り、西園寺くんは優しい言葉を、あたしにくれる。
こうしていると、あたしは友達として大事にしてもらっているんだなぁって思う。
嬉しい。嘘。嬉しくない。それも嘘。苦しい。半分正解。
もう半分は…えーっと、
「なずなちゃん?大丈夫?」
あたしの思考を遮るように、グッと西園寺くんの顔が近づく。
ふわっとほんのり甘くて、優しい香りが辺りに漂う。ギュッと胸が締め付けられる。恥ずかしくて、思わず後ろに後ずさる。
今あたし、絶対真っ赤になってる。
「あ、うん!大丈夫。西園寺くんと料理するの、すごい楽しみ」
「…ほんと?実は僕もめちゃくちゃ楽しみ」
少し照れている西園寺くんは、女子のあたしよりもずっと可愛く見えた。
𓈒𓏸𓈒 ☽ ꙳𓂃 ☕︎ 𓈒𓏸𓈒꙳
『僕はなずなちゃんと2人きりになりたいだけだから』
ついさっき、紫乃と水瀬くんの前で西園寺くんが言った言葉が、頭から離れない。思い出す度に頬が熱を帯びて、恥ずかしくて、嬉しくて、でもやっぱり恥ずかしかったり。
あー、もう駄目だ、あたし。
せっかくの西園寺くんとの2人きりの時間を考え事に割いてしまうとは……。
トン、トントン、トントントントン、と軽快なリズムで西園寺くんはにんじんを刻んでいく。それと同じリズムで私の心臓も音を立てる。
西園寺くん、料理もできたんだ。
「西園寺くんってほんとに器用だよね」
「ふふ、ありがとう。なずなちゃんに褒めてもらえるなら今まで頑張ってきて良かったかも」
「えへ…」
何だかくすぐったくて、へにゃりと笑みを浮かべる。
すると西園寺くんは、とんでもない爆弾発言を投下してきた。
「…何その反応。超可愛い」
「……!?!?」
超かわ………超可愛い!???えーっと、あ、あたしが!??
ほんっとに…どういうつもりなんだろ…。いつもこっちがドキドキするようなことばかり言って。いい加減責任、取って欲しい。この、人たらしめ。
「なずなちゃん、顔赤いけど大丈夫?」
文面だけ見れば鈍いだけの紳士。あたしを気遣ってくれる優しい人。でも現実は──
「い、いじわる!!」
「えー?そう?なずなちゃんこそ、熱でもあるんじゃない?」
そのまま西園寺くんはあたしの方に顔を近づける。
コツン、と音を立てて額同士がぶつかった。
「…っ」
「うん、大丈夫そう」
にこり、と笑みを浮かべた西園寺くんに見惚れていたら、次の瞬間には、それは真剣な表情に変わっていた。
「僕、なずなちゃんのことが好きだよ」
「………え」
「笑った顔も、怒った顔も、どんななずなちゃんでも、僕は全部全部可愛いと思うし、全部全部好きだよ」
「あ、ありがとう」
「そして、ずっとずっと側にいて欲しいし、ずっとずーっと僕だけを見てて欲しいなって。もしもなずなちゃんが僕を選んでくれるのなら、一生をかけて幸せにするし、一生後悔なんてさせないから。」
西園寺くんは、あたしの目を見て、丁寧に言葉を紡いでいく。
その瞳は、何かを求めて、焦がれて必死に手を伸ばす人の瞳だった。
そして、その「何か」は、西園寺くんにとってのあたし、というところまで思い至ったところで、今まで、いつもの3倍くらいのペースで音を立てていた鼓動が止まらなくなる。
……あ、止まったら駄目なんだっけ。とにかく、嬉しさのあまりあたしの思考回路はすっかりおかしくなっていた。
「あ、あたしも、西園寺くんが好き……」
「…ほんと?」
「うんっ!」
「じゃあ…僕たち、両想い、だし、恋人、になりませんか?」
「もちろんです!!喜んで!!!」
少し照れながらも西園寺くんが伝えてくれた言葉に、あたしは食い気味に答え、大きく頷いた。
「やった」
褒められた幼子のように、嬉しそうな笑みを浮かべた西園寺くんに思わず胸が高鳴ってしまう。可愛い…。
でも、あたしとは反対に、彼は少し悲しそうに目を伏せた。
「……あーあ、大事な場面で歯切れ悪くなっちゃった。なずなちゃんの前ではもっと堂々としてたかったのに」
可愛い。歯切れが悪かろうと、西園寺くんは本当に可愛い。
健気なところもまた可愛いし、もしかして前世は女子だろうか。
「えへ…。なんか照れるな…。でも、あたしはそんなところも好きだよ、奏太くん?」
「……っ、僕より男前なのやめてくれないかな」
「奏太くんは女子より可愛いくせに!!」
「そう?でも絶対になずなちゃんの方が可愛い」
真っ赤になりながら口論をしていると、ふいに奏太くんが笑い声をあげた。
「ふふっ……はは、あはは!!」
「ど、どうしたの?」
「僕たちは両想いってこと」
突然耳元で囁かれた好きな人の声に、鼓動が速くなるのを感じなから、何事もなかったかのようにあたしは後ろを振り向く。
「どうしたの?西園寺くん」
やはりあたしの後ろには予想通りの人物がいて、その整った顔に低レベルないたずらを企むちびっこのような笑みを浮かべていた。
そして、彼は秘密基地を教えるかのように、あたしにこう告げる。
「ね、今日の晩ごはん、僕たち2人で作らない?」
「…え」
それは……西園寺くんと2人っきり、という意味?あたしとしては嬉しいんだけど、でも、なんであたしを?
「あ、ほら、凌の馬鹿は紫乃さんと2人きりになりたいだろうし。売れる恩は売っとこうと思って」
西園寺くんは、いつもより少し早口で理由を並べていく。
ふーん、そうなんだ。水瀬くんが紫乃に告白するとでも思って背中を押そうとしてるの?
そんなことしても無駄なのに。だって紫乃と水瀬くん、絶対付き合ってるもん。紫乃にはデート用と思しき勝負服選びを手伝わされたし。
自分のことをめっちゃ想ってくれる可愛い彼女がいる水瀬くんに恩を売る暇があるなら、その時間をあたしにくれたらいいのに。
「えっと、その、なずなちゃんは、僕と2人きり、になるけどそれでも大丈夫?もし嫌だったら全然断ってくれていいからね??なずなちゃんに嫌な思いさせてまで凌に貸しを作りたい訳じゃないから」
いつも通り、西園寺くんは優しい言葉を、あたしにくれる。
こうしていると、あたしは友達として大事にしてもらっているんだなぁって思う。
嬉しい。嘘。嬉しくない。それも嘘。苦しい。半分正解。
もう半分は…えーっと、
「なずなちゃん?大丈夫?」
あたしの思考を遮るように、グッと西園寺くんの顔が近づく。
ふわっとほんのり甘くて、優しい香りが辺りに漂う。ギュッと胸が締め付けられる。恥ずかしくて、思わず後ろに後ずさる。
今あたし、絶対真っ赤になってる。
「あ、うん!大丈夫。西園寺くんと料理するの、すごい楽しみ」
「…ほんと?実は僕もめちゃくちゃ楽しみ」
少し照れている西園寺くんは、女子のあたしよりもずっと可愛く見えた。
𓈒𓏸𓈒 ☽ ꙳𓂃 ☕︎ 𓈒𓏸𓈒꙳
『僕はなずなちゃんと2人きりになりたいだけだから』
ついさっき、紫乃と水瀬くんの前で西園寺くんが言った言葉が、頭から離れない。思い出す度に頬が熱を帯びて、恥ずかしくて、嬉しくて、でもやっぱり恥ずかしかったり。
あー、もう駄目だ、あたし。
せっかくの西園寺くんとの2人きりの時間を考え事に割いてしまうとは……。
トン、トントン、トントントントン、と軽快なリズムで西園寺くんはにんじんを刻んでいく。それと同じリズムで私の心臓も音を立てる。
西園寺くん、料理もできたんだ。
「西園寺くんってほんとに器用だよね」
「ふふ、ありがとう。なずなちゃんに褒めてもらえるなら今まで頑張ってきて良かったかも」
「えへ…」
何だかくすぐったくて、へにゃりと笑みを浮かべる。
すると西園寺くんは、とんでもない爆弾発言を投下してきた。
「…何その反応。超可愛い」
「……!?!?」
超かわ………超可愛い!???えーっと、あ、あたしが!??
ほんっとに…どういうつもりなんだろ…。いつもこっちがドキドキするようなことばかり言って。いい加減責任、取って欲しい。この、人たらしめ。
「なずなちゃん、顔赤いけど大丈夫?」
文面だけ見れば鈍いだけの紳士。あたしを気遣ってくれる優しい人。でも現実は──
「い、いじわる!!」
「えー?そう?なずなちゃんこそ、熱でもあるんじゃない?」
そのまま西園寺くんはあたしの方に顔を近づける。
コツン、と音を立てて額同士がぶつかった。
「…っ」
「うん、大丈夫そう」
にこり、と笑みを浮かべた西園寺くんに見惚れていたら、次の瞬間には、それは真剣な表情に変わっていた。
「僕、なずなちゃんのことが好きだよ」
「………え」
「笑った顔も、怒った顔も、どんななずなちゃんでも、僕は全部全部可愛いと思うし、全部全部好きだよ」
「あ、ありがとう」
「そして、ずっとずっと側にいて欲しいし、ずっとずーっと僕だけを見てて欲しいなって。もしもなずなちゃんが僕を選んでくれるのなら、一生をかけて幸せにするし、一生後悔なんてさせないから。」
西園寺くんは、あたしの目を見て、丁寧に言葉を紡いでいく。
その瞳は、何かを求めて、焦がれて必死に手を伸ばす人の瞳だった。
そして、その「何か」は、西園寺くんにとってのあたし、というところまで思い至ったところで、今まで、いつもの3倍くらいのペースで音を立てていた鼓動が止まらなくなる。
……あ、止まったら駄目なんだっけ。とにかく、嬉しさのあまりあたしの思考回路はすっかりおかしくなっていた。
「あ、あたしも、西園寺くんが好き……」
「…ほんと?」
「うんっ!」
「じゃあ…僕たち、両想い、だし、恋人、になりませんか?」
「もちろんです!!喜んで!!!」
少し照れながらも西園寺くんが伝えてくれた言葉に、あたしは食い気味に答え、大きく頷いた。
「やった」
褒められた幼子のように、嬉しそうな笑みを浮かべた西園寺くんに思わず胸が高鳴ってしまう。可愛い…。
でも、あたしとは反対に、彼は少し悲しそうに目を伏せた。
「……あーあ、大事な場面で歯切れ悪くなっちゃった。なずなちゃんの前ではもっと堂々としてたかったのに」
可愛い。歯切れが悪かろうと、西園寺くんは本当に可愛い。
健気なところもまた可愛いし、もしかして前世は女子だろうか。
「えへ…。なんか照れるな…。でも、あたしはそんなところも好きだよ、奏太くん?」
「……っ、僕より男前なのやめてくれないかな」
「奏太くんは女子より可愛いくせに!!」
「そう?でも絶対になずなちゃんの方が可愛い」
真っ赤になりながら口論をしていると、ふいに奏太くんが笑い声をあげた。
「ふふっ……はは、あはは!!」
「ど、どうしたの?」
「僕たちは両想いってこと」



