「凌、その子は?」
動揺を隠しつつ、凌に聞くと凌は気持ち悪いくらいの笑みを浮かべてこう返した。
「あぁ、俺の幼馴染の来栖紫乃。今日は俺と紫乃と、お互いの親友の4人で帰ろうって話になって」
ねぇ、僕、何も聞かされてないんだけど?
凌に幼馴染がいることは知ってたけど、それ以外全部初耳だっての!
僕は、この親友の大事なことを先に言わないところだけは少し苦手だったりする。
「紫乃ーーー!!!もー、待ってってあんなに言ったのに!!!!」
「なずな…本当にごめんね」
先程のお下げ髪の子は口を膨らませながら、紫乃ちゃんをポカポカと殴っている。なんだか小動物のようでかわい……あれ?今、僕、可愛いって言おうとした?
ないないない。
女子って自分の目的のために手段を選ばない人ばっかだから。可愛いと思ったら、それは相手の思うツボ。
紫乃ちゃんだって、なずなちゃん?だって、そういう人たちかもしれないし。油断ならない。
「えっと、凌、この子は、私の親友の三栗屋なずなちゃん。情報屋って呼ばれるくらい学校内の噂に詳しくて、世界一可愛い子です。」
「初めまして」
「わー、はじめまして!」
「で、なずな、コイツは私の幼馴染の水瀬凌くん。ところどころ問題があるし馬鹿だけど、基本的にはいい奴だから!」
この2人、何年一緒にいるんだろ。紫乃ちゃんの凌の紹介が的確すぎる。
「ねぇ、紫乃。俺の紹介なんか雑じゃない?」
それ、僕も思ってた。なずなちゃんに対する説明が丁寧すぎただけかもしれないけど。
「あ、ごめん、バレてた?」
え、紫乃ちゃん、意図的にやってたんだ!??メンタル強くない?凌って怒ったら怖いよね!?!?
それとも凌って女子には優しくするタイプ?
うわーまじか引くわー
「あ、完全に紹介忘れてた。コイツは俺の親友の西園寺奏太。えっと…………人間。」
「凌?絶対テキトーだよね、何だよ人間って!!!僕のこと、動物だと思ってた??ってか、人間って言うまでの微妙な間も気になるんだけど。」
心の声が全部喉から出て、言葉になっていくがそんなのお構いなしだ。
さっきの凌に対する紫乃ちゃんの説明の方が1000000000倍はマシだったと心から思う。
「それで、こっちが幼馴染の紫乃。」
「さっき聞いたよ!!!」
「んー…、テスト勉強の天才」
「褒めるのかよ!!!!!」
え、何?幼馴染贔屓??
テスト勉強の天才って言われても別に……。凌が勉強絶望的なだけじゃないの?
その考えが間違いだったと僕が知るのは、まだまだ先のことなのだけれど。
「ふふっ」
不意になずなちゃんが笑い始めた。笑い方まで……可愛い。ほんとに可愛い。
ずっと女子を可愛いなんて思わないようにしてたのに。本当に、なずなちゃんがいると調子が狂う。
「なずなちゃん?どうしたの?」
なずなちゃんがずっと笑い続けているから、不安になって声をかけた。これが、僕たちの初めての会話であることなんて忘れて。
「ふふ、だっておかしくて…。西園寺くんって、何というか…人形みたいな人だなって思ってたから」
「僕が?」
「うん。西園寺くん、可愛い顔で笑顔を浮かべてるけど、心からは笑ってない気がしてたの。みんな、西園寺くんは穏やかで絶対怒らないって言うけど…ほんとにそうなのかなって。」
「……なんで」
「だって西園寺くん、この前廊下で女子に絡まれた時、ちょっと面倒そうにしてたもん」
全部なずなちゃんの言う通りだった。
西園寺奏太が穏やかな好青年なのは、他人の前でだけ。凌といると、心の声が出がちだけど。
三栗屋なずな…この子はなかなか侮れないのかもしれない。
もっとこの子のことを知りたい。
彼女への純粋な興味が次第に、恋へと変わっていくことを、この時の僕はまだ知らない。
𓈒𓏸𓈒 ☽ ꙳𓂃 ☕︎ 𓈒𓏸𓈒꙳
なずなちゃんとの出会いから数ヶ月。
今日から新学期で、僕たちは2年生になった。しかもいつメン4人とも同じクラス。
そう、いつメン。
僕は、あれから凌にダル絡みを仕掛け、なずなちゃんと仲良くなろうとした。
もちろん、なずなちゃんが可愛くて、実は気になっている…なんてことはない。彼女の持つ仮面破りのスキルの根源を探るためだ。
頑なに弁当を食べようとする凌を引きずって、軽音部の発表を見に行ったのに、なずなちゃんと紫乃ちゃ…紫乃さんたちのバンドが出ていなくて肩を落としたり。
今度は校庭に遊びに行くと言って聞かない凌を羽交締めにして、ふたりの所属バンドの発表を見に行ったり。
さらに午後に漢字テストがある日には、昼休みが近づくにつれソワソワしている凌が、紫乃さんに漢字テストのヤマを教えてもらおうとするのをなずなちゃんと一緒に全力で止めたり。
凌に頼んで、4人で帰らせてもらったり。
そうこうしているうちに、最初は遠かったなずなちゃんとの距離が段々と変化してきた。
そして僕にも…ある大きな変化があった。
いや、変化というよりは、かつての自分よりも自分の気持ちに素直になった、と言うべきだろうか。
もう、この際はっきりと言ってしまおう。
僕は……なずなちゃんが好きだ。
でも、僕がなずなちゃんに好かれるにはたぶん、まだ遠い。こうして僕の約1年間にも及ぶ猛アタック劇が幕を開けたのであった。
動揺を隠しつつ、凌に聞くと凌は気持ち悪いくらいの笑みを浮かべてこう返した。
「あぁ、俺の幼馴染の来栖紫乃。今日は俺と紫乃と、お互いの親友の4人で帰ろうって話になって」
ねぇ、僕、何も聞かされてないんだけど?
凌に幼馴染がいることは知ってたけど、それ以外全部初耳だっての!
僕は、この親友の大事なことを先に言わないところだけは少し苦手だったりする。
「紫乃ーーー!!!もー、待ってってあんなに言ったのに!!!!」
「なずな…本当にごめんね」
先程のお下げ髪の子は口を膨らませながら、紫乃ちゃんをポカポカと殴っている。なんだか小動物のようでかわい……あれ?今、僕、可愛いって言おうとした?
ないないない。
女子って自分の目的のために手段を選ばない人ばっかだから。可愛いと思ったら、それは相手の思うツボ。
紫乃ちゃんだって、なずなちゃん?だって、そういう人たちかもしれないし。油断ならない。
「えっと、凌、この子は、私の親友の三栗屋なずなちゃん。情報屋って呼ばれるくらい学校内の噂に詳しくて、世界一可愛い子です。」
「初めまして」
「わー、はじめまして!」
「で、なずな、コイツは私の幼馴染の水瀬凌くん。ところどころ問題があるし馬鹿だけど、基本的にはいい奴だから!」
この2人、何年一緒にいるんだろ。紫乃ちゃんの凌の紹介が的確すぎる。
「ねぇ、紫乃。俺の紹介なんか雑じゃない?」
それ、僕も思ってた。なずなちゃんに対する説明が丁寧すぎただけかもしれないけど。
「あ、ごめん、バレてた?」
え、紫乃ちゃん、意図的にやってたんだ!??メンタル強くない?凌って怒ったら怖いよね!?!?
それとも凌って女子には優しくするタイプ?
うわーまじか引くわー
「あ、完全に紹介忘れてた。コイツは俺の親友の西園寺奏太。えっと…………人間。」
「凌?絶対テキトーだよね、何だよ人間って!!!僕のこと、動物だと思ってた??ってか、人間って言うまでの微妙な間も気になるんだけど。」
心の声が全部喉から出て、言葉になっていくがそんなのお構いなしだ。
さっきの凌に対する紫乃ちゃんの説明の方が1000000000倍はマシだったと心から思う。
「それで、こっちが幼馴染の紫乃。」
「さっき聞いたよ!!!」
「んー…、テスト勉強の天才」
「褒めるのかよ!!!!!」
え、何?幼馴染贔屓??
テスト勉強の天才って言われても別に……。凌が勉強絶望的なだけじゃないの?
その考えが間違いだったと僕が知るのは、まだまだ先のことなのだけれど。
「ふふっ」
不意になずなちゃんが笑い始めた。笑い方まで……可愛い。ほんとに可愛い。
ずっと女子を可愛いなんて思わないようにしてたのに。本当に、なずなちゃんがいると調子が狂う。
「なずなちゃん?どうしたの?」
なずなちゃんがずっと笑い続けているから、不安になって声をかけた。これが、僕たちの初めての会話であることなんて忘れて。
「ふふ、だっておかしくて…。西園寺くんって、何というか…人形みたいな人だなって思ってたから」
「僕が?」
「うん。西園寺くん、可愛い顔で笑顔を浮かべてるけど、心からは笑ってない気がしてたの。みんな、西園寺くんは穏やかで絶対怒らないって言うけど…ほんとにそうなのかなって。」
「……なんで」
「だって西園寺くん、この前廊下で女子に絡まれた時、ちょっと面倒そうにしてたもん」
全部なずなちゃんの言う通りだった。
西園寺奏太が穏やかな好青年なのは、他人の前でだけ。凌といると、心の声が出がちだけど。
三栗屋なずな…この子はなかなか侮れないのかもしれない。
もっとこの子のことを知りたい。
彼女への純粋な興味が次第に、恋へと変わっていくことを、この時の僕はまだ知らない。
𓈒𓏸𓈒 ☽ ꙳𓂃 ☕︎ 𓈒𓏸𓈒꙳
なずなちゃんとの出会いから数ヶ月。
今日から新学期で、僕たちは2年生になった。しかもいつメン4人とも同じクラス。
そう、いつメン。
僕は、あれから凌にダル絡みを仕掛け、なずなちゃんと仲良くなろうとした。
もちろん、なずなちゃんが可愛くて、実は気になっている…なんてことはない。彼女の持つ仮面破りのスキルの根源を探るためだ。
頑なに弁当を食べようとする凌を引きずって、軽音部の発表を見に行ったのに、なずなちゃんと紫乃ちゃ…紫乃さんたちのバンドが出ていなくて肩を落としたり。
今度は校庭に遊びに行くと言って聞かない凌を羽交締めにして、ふたりの所属バンドの発表を見に行ったり。
さらに午後に漢字テストがある日には、昼休みが近づくにつれソワソワしている凌が、紫乃さんに漢字テストのヤマを教えてもらおうとするのをなずなちゃんと一緒に全力で止めたり。
凌に頼んで、4人で帰らせてもらったり。
そうこうしているうちに、最初は遠かったなずなちゃんとの距離が段々と変化してきた。
そして僕にも…ある大きな変化があった。
いや、変化というよりは、かつての自分よりも自分の気持ちに素直になった、と言うべきだろうか。
もう、この際はっきりと言ってしまおう。
僕は……なずなちゃんが好きだ。
でも、僕がなずなちゃんに好かれるにはたぶん、まだ遠い。こうして僕の約1年間にも及ぶ猛アタック劇が幕を開けたのであった。



