「………、すっかり、忘れてたよ。」 馬鹿だ。 折角、2人に渡そうと、家庭部が作って販売していたクッキーを買ったのに。 鞄にしまったまま、その存在を忘れていた。 「ちょっと、2人に渡して来る。」 まだ、2人共いるよね? するりと、暁の腕の中から抜け出して、私は慌てて小走りで駆け出した。 ………………最も安全な場所から。 「っっ、莉茉!」 後ろで暁の声が聞こえたけれど、お土産のクッキーの事で頭が一杯で、振り返る余裕は、私にはなかった。