「………………一樹。」 口ごもる莉茉ちゃんの母親を一瞥した暁は、興味を無くしたかのように、一樹へと視線を変えた。 「はい、何でしょうか?」 俺と同じように壁際に控えていた一樹が、素早く暁に歩み寄る。 「水瀬さん家族を、丁寧に会社の外までお見送りしろ。」 「分かりました。」 頷いた一樹を見た暁は。 「では、自分はお先に失礼します。」 無表情のまま、慇懃に一礼し、そのまま踵を返す。 そして、2度と水瀬一家を見る事なく、暁は会議室から出て行った。