実はマリはこの後1週間あまりで、
円山花壇を去ることになっている。

今回の装花の準備の佳境で忙しく
していた三月の中旬。

突然社長室に呼び出された。

裕は出張で大阪の事務所に行っている時で、
椿もお休みの日だった。

社長とはあまり会う機会もなくもちろん顔は
知っているし社内で会えば挨拶もするが、
接点はないので疑問に思いながら社長室に
赴いた。

「藤原マリさんだね。まあ座って。」

と言って少し裕に似たというか裕が父親に
似ているのだったが、ロマンスグレーの
今でいうイケオジ?の社長だ。

本社の女性スタッフは陰でイケオジ社長
などと呼んでいる。

マリはソファーに腰を掛けた。

秘書の男性がコーヒーを持ってきてくれて
そのまま部屋を出ていった。

「マリさん、君が裕と付き合っているのを
最近耳にしてね。
何でももう一緒に暮らしているとか?
ちがうかな?」

「はい、実はそうなんです。すみません」

とマリはなぜか謝っていた。

心の中では、あれっなんで謝ってる?
と自分でも不思議に思ったのだが、
社長の態度や問い方が非難しているように
感じられたからかも知れない。