「柊くん……」
「ん?」
柊くんの名前を呼ぶと、柊くんは抱き締めた腕の力をそのままに、優しく返事をした。
そんな柊くんに、あたしは疑問をぶつける。
「なんであたしが好きなの?」
「……」
「だってあたし、柊くんに振られるのが恐くて告白も出来なかった上に、更には逃げ出そうとするようなよわ虫だし……
好きなのに、それに気付かない柊くんを心の中で何度も「バカ」だとか「鈍感」だとか思ってたような奴だよ?
柊くんに好きになってもらえるような女の子じゃ……」
「それは俺が判断する事で、沙織がどうのこうの考える事じゃないだろ」
「だけどっ……」
「大体、どこが。とかそんなんが重要か?」
「え……」
それは……重要じゃないの?
首を傾げるあたしに、柊くんは一つ軽いため息をついてから言葉を落とす。
22時を過ぎた校庭。
静まり返った冬のつんとした空気が、柊くんの声で振動する。
「自分だけのモノにしたかった縄張りに、沙織はすんなり入れられた。
一緒にいるうちに……このままずっと一緒にいたいって思うようになった。
大切だったあの場所以上に……星が教えてくれる天文学よりも……沙織が欲しくて堪らなくなってた」
柊くんはすっかり大人しくなったあたしを離すと、至近距離で留まったままあたしへと視線を落とす。
……いつも、ずっと見つめていたいと思っていた、あの優しく穏やかな瞳で、あたしを見つめる。
「そんな強く想ってんのに、ただ沙織の答えを待ってるって知ったクラスの奴が、俺を変態だって言ったんだよ。
毎晩2人っきりでいるのに何やってんだって。
そんな絶好のチャンスに襲わない男なんか変態だってさ。……襲い掛かる男も変態だと思うけどな」
そう言って、柊くんは小さく笑って……でも、あたしは笑えなかった。
柊くんの言ってくれた言葉が、全部、全部嬉しすぎて……笑えられなかった。
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