動きの鈍い足をやっとの思いで走らせて校舎から出ると、冷たい空気を一気に吸い込んだせいで、喉も肺も何かが突き刺さったように痛かった。
「…ひ、……っ…、…」
痛みからではない涙が溢れ続けて、あたしの足が止まる。
こんな……こんな結末を望んでたんじゃなかった。
こんなんじゃなくて……
こんなんじゃなくて―――……
もっと、もっと――――……
「……―――っ!」
立ち止まったまま涙を拭っていると、不意に後ろから抱き締められて、あたしは身体を竦ませた。
あたしと同じように息を切らせているその人が、あたしを抱き締める腕に力を込める。
後ろから強く抱き締めるその人のぬくもりを知っている事に気付いて……あたしは余計に緊張を走らせた。
「……沙織」
耳元で、途切れた呼吸に混ざって囁かれた名前。
22時の星空の世界で、あたしと柊くんの白い吐息が空を飾る。
呼ばれた名前に答えられずに、ただ胸を高鳴らせていると……柊くんのふっと漏らした笑みが聞こえた。
……苦笑いみたいな笑い声が。
「ごめん……さっきの嘘は聞き逃せなかった」
柊くんは、あたしを抱き締めたまま言葉を続ける。
柊くんが言葉を落とす度に、空気が白く染まる。
「嘘だって分かってんのに……何やってんだろうな、俺」
何も答えないあたしに気付いて、柊くんは少し不満気にあたしに視線を向けた。
「大体、沙織も沙織だろ。……なんだよ、あの嘘は。
他に好きな奴ができたとかって、ふざけんな」
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