「今日は得意の嘘は出ないんだな」
話を切り替えた柊くんが、軽く笑いながら望遠鏡を覗く。
……別に得意なんかじゃないんだけど。
「……だって、嘘ついたって柊くん、すぐ見抜くんだもん」
あたしの言葉に柊くんは笑って……そして、あたしも知らなかった事実を口にする。
「沙織はさ、嘘つく時、口尖らせるんだよ。だからすぐ分かんの」
「えっ……嘘! いつから?!」
「最初っから。……ずっとだよ」
「ずっと……」
「そ。……俺が沙織見てきてからずっと」
……またそういう事言うし。
柊くんは黙ったあたしを見てにこりと笑って……そして視線を外す。
柊くんの気持ちが分からない。
柊くんが何をしたいのかが分からない。
あたしを……どう想ってるのかが、分からない。
1年もずっと……
ずっとずっと気持ちを言えなかった情けない自分。
ずっとずっとはぐらかしてきたような柊くんの態度。
柊くんからもらった言葉は……あたしの中に鉛みたいに重く真っ黒く沈んでいて……
それはもう……ドキドキよりも、ジクジクと胸の奥を痛ませる。
堪らない想い。
「……っ……、…」
胸の奥に沈んだ気持ちがひどく痛んで、あたしの視界が揺らいでいく。
それは……ずっと隠してきた気持ちが溢れ出したのかもしれない。
滲み出した気持ちは止まらずに、頬を流れて雫となって床に落ちる。
もう……全部が嫌だった。
言えない自分も、気付かない柊くんも、この空間も、一等星も、十等星も、月も。
全部が、嫌で仕方なかった。
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