そ、そうなの? 一度も?
トゥールーズが気をつかわしげに口を開いた。
「確かにそうでしたわね……。ベアトリス様は一番機の回るヘティさんをなにかといつもそばに呼びたがりますから、旦那様も奥様も、ヘティさんに里帰りを望まれてもなかなか許すことができないのが実情でございますわ……」
べッ、ベアトリス……! ブラック上司もブラックすぎるよ、あなた!?
十年以上家族の顔も見られないなんて、いくらなんでもひどすぎるでしょ!
「そ、そうだったのね、ヘティ。あなたにはすぐにでも休暇が必要ね。これまで休めなかった分合わせると何日くらいになるの?」
突然ヘティがくすくすと笑いだした。



