「それはお相手にもよりますが、避けておいたほうが良いかと存じます。お相手によっては、過去の辱めや悲しみを掘り返されて嫌な思いをなさってしまうかもしれません。折角の謝罪のお手紙なのに、ベアトリス様に対して逆に嫌悪や敵対心を煽ってしまうことになりかねませんわ。ここは、あのときは申し訳なかった、許してほしいと書くにだけに留めましょう」
「え、あ、そう……なの……?」
元となる謝罪文のそのあとに、みんながリストにまとめてくれた意地悪や悪行の内容についても触れてさらにごめんなさいと書くつもりだったけど。それは不要ってこと? まあ、書く分量が減るのはありがたいに越したことはないけど。
「貴族は体裁や建前、恥や外聞を気に致しますから。内容としては、この文面だけで意図は伝わりますから問題はございません」
「個別に丁寧にと思っていたけど、それが貴族の世界では逆に気に障ってしまうのね。わかったわ、ヘティの言うとおりにするわね。私が気が付かないことを指摘してくれてありがとう」
私がそういったとたん、トゥールーズ、メディナ、サラフィナが目を丸く、口をあんぐりと開けた。



