えっ、あの毛嫌いされている婚約者に?
そう思ったが、へティの話によればエバンは最近王宮警備に職を得たらしく、もしかしたら融通をきかせてくれるかもしれないということだった。
あの苦々しい顔を思い出すに簡単なことではなさそうに思えたが、他に手立てがない今、それに懸けてみるほかない。
「へティ、早速エバン様と話がしたい! どうすればいいの?」
「まずは、お手紙を書かれてみてはいかがでしょうか」
善は急げとばかりに手紙を書く準備を始めた。ベアトリスの日記もそうだったけれど、不思議とこの世界の文字は見たことがないのに、目で追うと、自動翻訳されているかのように、頭の中に意味が伝わってくる。書く方もそううまくいくのかどうかと怪しんでいたけれど、これがどういうわけか、羽ペンとインクで紙に日本語で文字を書くと、なぜかインクが染みこんでいくと同時に、この世界の言語に書き換わっていく。



