まずいなぁ、このままじゃ……。
 自分のものとは思えない、細く白くすらっとした指を折る。
 目が覚めてからもう十日が経ってる。こんな調子じゃライブ当日までなんてあっという間だ。
 なんとかこの状況を打破しないことには、日本に帰れない。
 部屋を抜け出して、屋敷を抜け出して、なんとか王宮に……。
 そもそも王宮へいくにはどうすればいいんだろう。ここから近いのか遠いのか。
 窓の外にはこの家の馬車らしいものが時々行きかう。
 あのひとつを借りれれば……。
 いや、でも待って。私、馬なんて走らせたことないじゃん……!
 王宮までの道もわかんないし、え、どうすればいいんだろう……!?
 かといって、手をこまねいているわけにもいかない。