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「心配したぞ、ベアトリス!　とにかくしばらく無理はせず、療養に専念するんだ、いいな?」
「はい、お父様……」
「そうですよ、ああそう、頭の傷は髪に隠れて目立たないから心配いりませんからね」
「ええ、お母様……」

　信じられない。どうしたらいいの。誰か教えて欲しい……。
　見知らぬ貴族のおじさんおばさんを、どうしてお父様お母様と呼ばなきゃいけないの。
　転生とか異世界とか、私一度だって望んだことないんですけど。
　信じたくないけど、本当に私、楠本容子はどこか知らない国のベアトリスというお嬢様に乗り移っている。
　なにがどうなってこうなったのか、てんでさっぱりわからない。

「ふう……。ひとまず、落ち着いたようでなによりだ。ヘティ、ベアトリスを頼んだぞ」
「はい、旦那様」
「そうね、昨日のような錯乱状態が続いたらどうなることかと思ったわ。よく見ていてね、ヘティ」
「はい、奥様」