「おはよー」
私が教室に入ると、まりちゃんが駆け寄ってきた。
「美里ちゃん、おはよう! ね、知ってる?」
「え、なにが?」
私は昨夜考えてたことを忘れられなくて、また何かよくないことが起こったのかとドキッとした。
「明日から夏休みなんだってー! サイッコーじゃない?」
「え?」
今は10月。夏休みはとっくに終わっているし、冬休みまでもまだ間がある。学習発表会、いわゆる文化祭が来月にあってその準備がそろそろ始まろうという時期だ。
なのに夏休み?
「校長先生が決めたんだって!」
「校長先生?」
すると教室のドアが開いた。
「お~い、お前たち。今日は授業はなしだ」
「やった~!」
歓声が爆発する。そこら中で教科書や上履きなどが飛び交う。
え? 一体なにが起こってるの?
「美里ちゃん、休みだって! 遊ぼ!」
まりちゃんが満面の笑みを浮かべる向こうで、教室の入り口に立った黒沢先生“だったもの”を見た。
「え……」
黒沢先生の顔の真ん中には、腕がくっついていた。まるで象のようだ。表情が笑顔なのがまた、気持ち悪い。腕はなく、背中の真ん中にも腕がくっついて、プラプラと揺れている。
「どういうこと? なんでみんな笑ってるの?」
そんな黒沢先生を見ても、誰も驚かない。大喜びで歓声を上げている。中にはすでに帰り支度を始めている子もいる。
「美里ちゃん、帰りどっか寄っていこう!」
「う、うん」
奇妙な生き物になってしまった黒沢先生から目を離せないまま、私はまりちゃんに揺すぶられていた。

