【中】暴君の溺愛は、罪なほどに。

****
―語り部視点―


 とある日を境に、またたくまに街中へ広まったうわさ。

 最強で、最恐の暴走族・Night Empireの帝王(エンペラー)(プリンセス)を迎えたという話は、近辺の暴走族に衝撃を与えた。

 ある者は“触れてはいけない逆鱗(げきりん)”として、ある者は“好奇心”で、ある者は“弱みになりえないか”という下心で、なぞの(プリンセス)の正体を探る。


 それは、愛奈が一目惚れしたBomb(ボム) Strike(ストライク)の総長も同じだった。




「くそっ、Night Empireの(プリンセス)ってのは、どんな女なんだ?まるで情報が出てきやしない!」


「他の暴走族は、なにか情報をつかんだってうわさっすが…」


「完全に出遅れたな…!」




 くしゃっと髪をつかんで、くやしげな顔をするBomb Strikeの総長の背後に、ピンクの髪をふんわりとボブにした少女が現れる。