朝食を食べたあと、私は士瑛(しえい)さんや(こころ)くん、Night Empire(ナイトエンパイア)の人たちの目から逃れて、廊下の端の窓を開けた。

 シーツを結んで長いロープに変え、それを窓の外にたらして脱出する、というのをなにかの漫画で見たことがある。

 シーツをどうやって入手するかはさておき、窓の外を見下ろしてみると、人の姿はなかった。




「逃げようとしてるの?俺の城から」


「っ、怜央(れお)…!?」




 うしろから聞き覚えのある声がして、肩が跳ねる。

 誰にも見つからないように来たのに、いつのまに…!?

 振り返った私を、怜央は無表情で見つめた。




「逃がさないよ。どこにも行かせない。夕華(ゆか)は俺の唯一だから」


「…」




 そうやって、ずっと外に出してもらえないなんて嫌。

 私は、ぷいっと顔を背けて、怜央の横を走り抜けた。