耽美なる箱庭



 指先が凍えて、冷えていく。視線と言葉で糾弾する麗は、俺の愚かな言い分を待っていた。

 厄介なほどに、麗は頭が回る。


「────あれは、表現者だよ」


 的を得た言葉が、俺に刺さった。

 喉から手が出るほど欲しい才能を持て余し、努力では辿り着けない天才。それが、──泗水乃々という少女の実態だ。

 数多の小さな星の中で、目を奪われる一番星。


「容姿の優れた一般人が、プロに囲まれたからって完璧な被写体になれると思う? カメラの前で怖気付くわけでもなく、周りを圧倒させるとか常人じゃないよ」

「……」

「その稀有な才能を、女優でもモデルでも何にでもなれる選択肢を、他でもないお前が潰して狭めてる」


 麗の言ってることは、全て正しい。

 寒さで悴む指先を服の裾の中にしまい、俺はしばらくの間、麗の正しさを咀嚼した。

 この広い世界で、正しさは重要だ。

 俺だって、正しいことの恩恵を受けている。犯罪者が捕まり罰せられるのも正しさ。なら──乃々を羽ばたかせることも、正しさの一つか?

 ……否。


「俺もお前も、等しく傲慢だな」

「……あ?」


 自己満足の正しさを鼻で笑い、俺は麗に嘲る笑みを向けた。


「────世界を狭くすることの、何が悪い?」