耽美なる箱庭



 俺を見上げる乃々が、破顔する。

 身長差のせいで、つま先を立てて必死に首の後ろに手を回してくる乃々を見守った。なにしても可愛い。


「ふふ、好き〜」


 予想した通りというか、乃々は恋人同士になった途端に遠慮なく甘えてくるようになった。毎日包み隠さず好意を伝えてくる。

 嬉しい反面、平静を装うのに必死だ。

 甘えたがりの乃々を押し倒さないよう、身体が密着する度に素数を数える。


「おはようのキスしよう?」

「明日の朝、唇痛いって泣いても知らねぇけど」

「ん? 夜にいっぱいするから?」

「そう」


 好きな人と身体を重ねることを純粋に楽しみにしている乃々と違い、散々我慢してきた欲望をぶつけるつもりの俺は乃々を抱き潰す予感しかしない。


「ねえ、千佳くんって、だれかとキス以上のことしたことある?」

「ない」

「じゃあ、わたしが最初で最後? はじめて?」

「あたりまえだろ」

「んふふ。千佳くんモテるのに、わたしだけなんだ」


 嬉しそうに顔を綻ばせる乃々の額に、耐えきれずにキスの雨を降らせた。

 麗に「ロリコン拗らせ童貞」と呼ばれたこともあったが、乃々が未使用の俺を喜んでるから不用意にそこらの女を抱かなくてよかったと思う。

 ま、乃々以外の女に勃つわけもないし、触るだけで吐き気がするから元から無理な話。