〔 千佳 side 〕
俺の恋人が、世界一可愛い。
凍窓のそばで黒い液体の入ったマグを片手に苦味と酸味を味わっていれば、寝癖をつけた乃々がやってきて俺の腕の中にすっぽりと収まった。
本当に、やることなすこと、挙動の全てが可愛いに直結している。
「うぐっ、ハグが苦しいよぉ〜〜!」
「……悪い」
衝動的に抱き締め返せば、力加減を間違えたらしく腕の中で呻かれた。
長らく幼なじみとして接してきたが、想いを伝えた真夜中を境に、危ういバランスで保ってきた理性が崩壊している。よく箍が外れるのが最近の悩みだ。
乃々の誕生日を目前に控えて、我慢が効かなくなっているのは自覚していた。
ようやく全て自分ものになると思うと、発作のように我を忘れて抱きしめてしまうから執着の成れの果ては恐ろしい。
「明日だね? わたしの誕生日」
「あ゛ー……」
朝の陽だまりに溶ける乃々が、俺の腰にひっついて容赦なくダメージを負わせてきた。
もはや煽りだろ、こんなの。
時計の針が12を指した瞬間に抱くと決めてるが、それをわかっているはずの乃々が、心底嬉しそうに何度も言うから心が乱される。
俺は珈琲を飲み干して、どうにか理性を貫いた。



