耽美なる箱庭



 熱を宿した瞳で、千佳くんは隙あらば唇を奪ってくるから油断ならない。してもいいけど、まずはお話したいんだよ!

 両手でぺちんと千佳くんの口元を押さえた。


「キスガード!」


 精一杯、目をつりあげて抵抗してみたけど、掌をぺろりと舐められて、情けなく失敗におわる。むむむ。

 ベッドの上で寝てると逃げ場なんてないし、まず腰を抱かれてるから少しの距離すら開けられない。袋の鼠だ。


「……子どものわたしには、手を出さないんじゃないの?」


 かわいくない言い方だけど、過去のわたしは失恋の痛みを何度もちくちくと味わってきたのだから、答えてくれてもいいと思う。

 涙目で千佳くんを見つめれば、若干戸惑ったように指先が彷徨った。

 それから、一呼吸置いて千佳くんは語り出す。


「約束なんだよ、お前のお父さんとの」

「え、ぱぱとの、約束……?」

「そう。乃々が20歳になるまでは、両想いになっても手を出さない約束。流石に好きな子の父親とした約束は破れるわけないだろ。付き合ったらお前は絶対べたべたに甘えてくるし、迫られてベッドに誘われでもしたら、俺の理性なんて塵と化す」


 だから伝えなかった、と言葉を締めくくる千佳くん。

 ……なんというか、律儀だ。