耽美なる箱庭




 理性的で整然とした千佳くんの感情が、静かに爆発する。重ぐるしい空気が肺に留まり、わたしは逼迫した目の前の男に、目を丸くして息を止めた。

 月明かりすら届かない夜の箱庭のベッドで、暗順応した瞳の照準を、千佳くんに固定する。

 薄らと開いた唇が、本心を吐露した。


「俺は、乃々に泣かれんのが、一番堪える」

「……」


 わたしの眦を、指先でするりと撫でた千佳くんが、耐えてるような顔で眉を寄せる。

 いつも高みで達観してる千佳くんが、今は対等に感じられた。


「乃々は、なにもできなくていい」

「……ち、か、くん」

「俺がいないと、生きていけないくらいでいい」

「……、……」

「自立も一人暮らしも、冗談じゃねぇよ」


 透明の手錠をはめられたような。飛ぶための羽を捥がれたような。箱庭に閉じ込められたような感覚。

 疑いようのないわたしへの執着に、心臓がどくんと跳ねた。

 すこしくらい、自惚れてもいいよね。


「千佳くん、伝えたいことがあるの」

「……俺も、ある」

「じゃあ、せーのっ、で言う?」

「いや、俺に言わせて」


 ふ、と弓なりに口を緩めた千佳くん。

 蕩けてしまう甘い眼差しが、わたしを捉えた。









「────愛してるよ、俺の乃々」