耽美なる箱庭



 約数年、引きこもり生活をしていたから、わたしは住んでる地域のことに無知だ。

 西の方にある飲み屋街は危ないとか、ビルの解体工事で事件がとか、ぜんぜん知らない情報に驚く。


「ののちゃん、こわい?」


 優しい麗くんが、頭をぽんぽん撫でて、気にしてくれる。

 怖くはない。でも、いまこの場にいない千佳くんが絡まれてたらどうしようと想像してしまう。非力なわたしが、助けられるだろうか……。

 脳内で救出シュミレーションをした。


「千佳くん、大丈夫かな……」

「なんの心配? あのデカブツが絡まれる心配?」

「うん……」

「絡んできた相手、返り討ちにするようなやつだから大丈夫だよ」


 麗くん、さっぱりしてるなぁ。

 赤子か子猫を愛でてるつもりなのか、ずーっとわたしの頭を撫で回している麗くんは、妖艶な微笑みを向けてくる。

 それに安堵したのが、悪かったのかもしれない。


「ほら、このニュースとか見てくださいよ」


 楽観したわたしを、過去をつれた災厄が嘲笑った。